カルチャー
[女性誌速攻レビュー]「DRESS」2月号

「DRESS」月刊休止号! 創刊時に掲げた“マニフェスト”は遂行できたのか?

2016/01/18 21:00

■「DRESS」が取り上げるべきだったテーマ

 最終号となって、あらためて毎号巻末に掲載されている「Project DRESSマニフェスト」を読んでみました。「DRESS」は創刊当初、「柔軟なパートナーシップ」「子育て環境の充実」「OTAGAISAMA精神」「単身高齢者に優しい住環境」「生涯現役社会の実現」の5つを推進していたのです。思い返してみるに、これらの項目を推進するための企画って、どれだったのでしょうか。「柔軟なパートナーシップ」と言っていますが、誌面では婚活特集に力を入れたりして、婚姻制度以外のパートナーシップを提案していたようには見えません。

 「柔軟なパートナーシップ」というマニフェストを見て思い出しましたが、12月に、選択的夫婦別姓と女性の再婚禁止期間についての裁判がありました。これは、女性の婚姻制度のあり方を問う、非常に重要な裁判だったと思います。これこそ、マニフェストを実行するのにふさわしいテーマではないでしょうか。裁判では、再婚禁止期間は違憲だけど100日に短縮する、夫婦同姓は合憲と判決が出ましたが、「納得のいかない」と声を上げた女性はたくさんいました。

 よその雑誌でもさんざんやっていた妊活だの卵活だのをアラフォー向けの雑誌でやっても、どれだけ意味があったのでしょう。女が働くということはどういうことか、パートナーとの関係をどう築くか、社会人として長く勤めてきた女性をターゲットにした「DRESS」こそ、これらの裁判に向かって問題を投げかけ、どっかんどっかんと大花火を打ち上げるべきだったのではないかと思います。それこそ裁判の方向を左右するくらいに。

 結局、当初はバリキャリ向けに創刊したものの評価されず、全方位のアラフォー読者にウケようとした結果、意思の見えない誌面になってしまいました。マニフェストを掲げて、それを貫くのなら(全面リニューアルしたあとも、このマニフェストは掲載され続けていました)、もっとここに立ち返ってもよかったのではないかと思います。日本での女の生きづらさへの闘いは、働くアラフォー女性にこそ共感を持って受け入れられたのではないでしょうか。それとも、今の「DRESS」にはそこまで硬派な企画を推進するつもりがなかったのでしょうか。

 高らかにマニフェストを掲げていたものの、「DRESS」の誌面を振り返ると、そこから浮かび上がってくるのは、オシャレや恋愛、グルメ、遊びといった娯楽には夢中になるけれど、他者は割とどうでもいいという自己中心的な女性像。そこには「所詮、ファッション誌を読む女なんかその程度だろう」という作り手の視点まで感じてしまうことがありました。

 そして、出版不況と言われる中、立ち位置を見つけられず、魅力ある企画を打ち出せないまま撤退になってしまった「DRESS」を見ると、もはや雑誌の時代ではないんだなということを痛感します。
(増井涼子)

最終更新:2016/01/19 20:27
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