『産婦人科医ママと小児科医ママのらくちん授乳BOOK』著者インタビュー

なぜママたちは“母乳神話”に振り回されてしまうのか? 女性医師が語るネット時代の育児情報

2015/12/22 15:00

■自分の価値観を押しつけないよう気を付けましょう

 同書に掲載されている、おいしい母乳を作る食事はあるかどうか、粉ミルクだと病気になりやすいのか否かといった情報を知ると、今まで世間一般で言われてきた“定説”は何だったのか! と驚かされる。真偽の曖昧な情報で、これ以上育児中のお母さんたちを不安にさせないよう、我々にできることはあるだろうか?

「それにはまず、いい加減な情報を拡散しないこと。その情報が根拠を示しているかどうか確認するのも重要です。また、その説を唱えている専門家が同業者の中でどのように評価されているか。その専門家を批判している人がいないか。母乳が出るという謳い文句の商品を売りつけようとしないか、というのも判断の目安となるでしょう。もし周りに授乳中の人がいれば、直接的なことを言わなくても、態度で自分の価値観を押しつけないよう気を付けましょう。例えば“あら、ミルクなの?”と残念そうなトーンで言ったり、“まあ!母乳なの!”と、やたら褒めたりすることです」(森戸先生)

 そういえば筆者も子連れで訪れた某デパートで、女性販売員に「あらまあぁ~大きな赤ちゃん♪ 母乳でしょ!?」と目を輝かせて話しかけられたことが数回あるが、あれもおっぱい右翼だったのだな。ちなみにわけがわからないまま「え、はい」と答えたら、そうでしょうそうでしょうとばかりに、何度も笑顔でうなずいていた(本当は混合なんだけど)。

「偏った価値観を押しつけられたり、怪しい情報を吹き込まれたお母さんたちは、もっと言い返してほしいですね。授乳の真っ最中は疲れていて言い返せないかもしれませんから、時間がたってからでも声を上げましょう。『こう言われてつらかった』『これはおかしいと思う』ということを、フィードバックしていくのです。投書でもメールでもいいので、病院や市役所、保健センターなどへ声を届けてください」(森戸先生)


 ネット界では衝撃的な内容ほど人目を引くし、自分のやっていることを認めてほしい! という気持ちもあるだろうが、その陰で追い詰められる人や、被害をこうむる赤ちゃんがいることを、頭に入れておきたいもの。お母さんと赤ちゃんの健全なおっぱいライフのため、専門家も一般人も、公正で正しい授乳情報をアップデートしていけると理想的なのだが。
(山田ノジル)

最終更新:2015/12/22 18:10
産婦人科医ママと小児科医ママの らくちん授乳BOOK
「最良の母親とは、まあまあの母親である。」