カルチャー
「ものづくり女子ツアー」レポート

女性も活躍するリアル“佃製作所”を見学 ドラマ『下町ロケット』で注目される町工場の魅力とは?

2015/12/20 15:00

■若手女子社員も活躍

 そうした“浜野プライド”は若手メンバーにも脈々と受け継がれている。実は最近、女性の若手職人も増えているという。それが、浜野製作所初の大卒社員である設計開発部所属の山本佳代さん(28歳)と、小売業から異例の転職を果たしたという製造部の中原愛さん(34歳)。まだまだ男性優位が色濃く残っていそうなイメージの町工場ですが、おふたりがなぜ浜野製作所を選んだのか聞いてみた。

中原愛さん(左端)と山本佳代さん(左から2人目)

――浜野製作所で働くことを選ばれたのはなぜでしょうか?

山本佳代さん(以下、山本) 大学は工学部だったのですが、もともと、ものづくりが好きでした。それで、就活のときに就職先をどうしようか教授に相談したときに、面白い企業があるよと教えてもらったのが浜野製作所でした。当時「HOKUSAI」のプロジェクトなど、色々なことにチャレンジしていて、こんな会社はないんじゃないかと思い、工場見学をさせてもらったりする中で、面接を受けることにしました。
大手企業という選択肢もあったのですが、何かを製造するといっても分担することになるので、自分でつくったものが出来上がる過程を見る機会がないんですよね。でも浜野製作所は、下のフロアに行けば現場を見ることもできますし、自分がつくっているものがどういう状況にあって、どんな問題があるのかということがすぐにわかるので魅力を感じました。

中原愛さん(以下、中原) 私は、種類問わず部品を製造しています。これまで小売り業で販売を担当していたので、まったく違う職種ですが、ずっと製造業に興味があったんです。文系の出身で何もわからない状態だったのですが、社長に拾っていただくことができました。販売はサービスという目に見えない価値を提供するものですが、製造はできた部品が明確に目の前に現れて、それが価値を生むというところが魅力でしたね。今年2年目になりますが、ゼロから皆さんに色々教えてもらっている状態ですね。

電気自動車プロジェクト「HOKUSAI」

――仕事のどんなところにやりがいを感じていますか? またこれからどんな仕事をしていきたいとお考えでしょうか。

山本 深海探査艇「江戸っ子1号」の開発を入社1週間くらいで任されたことは、すごくやりがいがありましたし、最初は大変でしたけど成長を感じられましたね。海のことはもちろんですが、加工のこともよくわかっていない新人でも、大きなプロジェクトに関われるということは、すごく貴重なことだったと思っています。いまは、まだまだ周りの先輩に教えてもらうことが多いですが、早く独り立ちして色々な仕事を任せてもらえるようになっていきたいですね。

中原 先輩方は最低でも加工の機械4、5種類を扱っています。機械自体を動かせるようになるまで半年くらいかかりますし、深く使えるようになるにはもっと年月が必要です。なので、まずは製造のことをしっかり理解していきたいと思っています。10年後といった先のことよりも、目の前のことをしっかりやっていきたいですね。人数が少ない分、なにかやるときのスピード感は早いので魅力的です。大きい会社だと自分ひとりで勉強しないといけないのですが、お手本が身近にたくさんいるのでよりスピード感を持って成長できる。そこが町工場全体の魅力だと思います。

 海外から安価な製品や部品が手に入る中、日本でしか生み出せない技術や製品を継承していくことは、国の未来をつないでいくことにほかならない。社長以下ベテラン社員から若手女性社員まで、プライドを持って成長を続ける浜野製作所の姿からは、日本におけるものづくりの希望を感じた。

 最終回に向けてますます注目が高まる『下町ロケット』。現実の町工場もまた苦戦しながら未来につながる技術力を高めるべく、日々チャレンジを続けているようだ。
(末吉陽子)

最終更新:2015/12/20 15:00
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