サイゾーウーマンカルチャーインタビュー“オトナ女子”が着るべき服とは? カルチャー 「WWDジャパン」シニアエディター、松下久美氏インタビュー “オトナ女子”が着るべき服とは? アラフォー世代のトレンドとファッションビジネスの現状 2015/12/17 15:00 ファッションインタビュー ――アラサー・アラフォー世代に人気のブランド「ENFOLD」はマルキュー系ブランド「SLY」の元ディレクター、植田みずきさんが手がけているんですよね。 松下 彼女は元「COCOLULU」の販売員で、その後「SLY」のディレクターとして活躍していましたが、彼女自身のライフステージが変化するのに伴い、一枚で着てもサマになり、抱っこをした赤ちゃんのよだれがついても、泥んこの子どもに抱きつかれても気にならず、簡単に手入れができて耐久性があり、着心地のいい服が作りたくなった。そこで生まれたブランド「ENFOLD」は、インターナショナルなトレンド感があって着心地がよく、幅広い世代に支持されています。ファッション誌のエディター界隈でも着ている人がすごく多いんです。その「ENFOLD」をはじめ、「スナイデル」、「FRAY I.D」などマッシュスタイルラボ社のブランドなどは、大人女子ファッションのキーポイントになると思います。 それから、最近のファッション界で大きなテーマの一つが、「ノージェンダー」「ジェンダーレス」です。多様性が求められる時代性を反映しているわけですが、「シェアード・ワードローブ」と言って男女が同じアイテムを着るんです。大手アパレルのJUNは「ADAM ET ROPE」のカプセルコレクション(期間や数量限定のコレクション)としてジェンダーレスの新ブランド「ilk」を発表しましたし、アダストリアの「niko and…」も11月からノージェンダーのラインを打ち出しました。アメリカ発のブランド「SAVE KHAKI」は、メンズとレディスの区分がなく、自分の好きなサイズ感を選ぶという楽しみ方を提案しています。 ――ライフスタイル重視になることで、服を売る側にとって今は難しい時代なんでしょうか。 松下 すごく難しい時代だと思います。モノだけならインターネットでも買える時代に、わざわざショップに足を運んで購入してもらうには、よりコミュニケーションが重要になってくるでしょう。販売員さんが「パーソナルアドバイザー」や「スタイリスト」と呼ばれる流れがあるのですが、お客さんのクローゼットの中をわかっていて、今、買うべきものをアドバイスしてくれたり、いつも同じようなものに偏りがちな思い込みを打破して、自分に似合う新しいものを提案してくれる販売員さんがいたら、ショップに行く動機付けになりますよね。 ――アラフォー世代が憧れたデザイナー、ジャンポール・ゴルチエとセブン&アイ・ホールディングスなど、コラボレーションも増えていますが。 松下 すばらしいデザイナーだとは思いますが、なぜ今さらジャンポール・ゴルチエなのかと、実は不思議に思っていたんです。ゴルチエは14年にプレタポルテ(高級既製服)から撤退し、香水とオートクチュール(高級注文服)のみの活動なので、確かに彼の服は今ここでしか買えないんですね。しかも、知名度は抜群です。ですから、往年のファンを含めて注目度が高く、しかもバブル時代にゴルチエを着ていたり憧れたりしていた方々は現在アラフィフぐらいですから、10代20代の子どもと一緒に店舗を訪れて、それが若い新規顧客獲得にもつながった。売り上げも好調ですし、このコラボレーションは成功と言えますね。メディアで話題にもなりましたし。ちなみに来店客の3割がウェブで商品を事前にチェックしてから来店しているというのも時代だなと思いますね。 他にもユニクロでは、ゴルチエと同じく、元「エルメス」デザイナーのクリストフ・ルメールと組んだ「ルメール」や80年代のスーパーモデル、イネス・ド・ラ・フレサンジュと組んだラインも非常によく売れています。 『フランス人は10着しか服をもたない』(大和書房)というベストセラーもありましたし、断捨離もはやっていますが、もうものを大量に欲しいという時代ではなくなってきています。ファッションビジネスは、ブランドの歴史や職人技などに裏打ちされた丁寧なものづくりによる長く愛せるロングライフの商品、あるいは、生活を快適にする機能性の高い商品か、製造や物流などのシステムに裏打ちされたコストパフォーマンスの高いファストファッションかに二極化しています。その中で、いいものを知っている大人世代には、デザイナーとのコラボなど、クリエイティビティに裏打ちされたファストファッションアイテム、つまり、安くてもしっかりとデザインされた、“話題になる服”の人気は高く、今後も消費の起爆剤になりえるでしょう。 (穂島秋桜) 松下久美(まつした・くみ) 「WWDジャパン」シニアエディター、ファションジャーナリスト。国内外のSPA(製造小売)企業やセレクトショップ、ガールズ系企業や百貨店、アパレルなどの経営やマーケティングを中心に担当。NHK-BSで「東京ガールズコレクション」の解説や、『ユニクロ進化論』(ビジネス社)執筆など幅広く活動。 前のページ12 最終更新:2015/12/18 16:19 Amazon ユニクロ進化論 とりあえずコラボ買っとけ! 関連記事 「個性的に見えないオシャレ」を堂々と掲げる「美人百花」の“ファッション”へのジレンマ「体のラインが出る服は微妙」スーパーに行く際のファッションまで指南しだした「VERY」「“愛され”にお金は払えない」マンガ家・久世番子×曽根愛が語る女子ファッション闘争「あした、なに着て生きていく?」キャッチコピーが示す、女子の“気分”とファッションの“空気”篠原涼子『オトナ女子』は「オッサン目線の女子考察」!? 敗因は「40女をバカにしすぎ」 次の記事 有川浩、新潮にも切られた!? >