重要なのは「血のつながり」じゃない。愛とエゴとコミュニケーションで成り立つ「家族」の醍醐味
――本屋にあまた並ぶ新刊の中から、サイゾーウーマン(サイ女)読者の本棚に入れたい書籍・コミックを紹介します!
■『お母さん二人いてもいいかな!?』(中村キヨ、ベストセラーズ)
『お母さん二人いてもいいかな!?』は、タイトルの通り、同性愛者である著者と妻の2人で、3人兄弟を育てる日々を描くコミックエッセイだ。
シングルマザーだったパートナーと出会った経緯から、子どものためにカブトムシを捕りに行ったり、長男が照れながら2人の母親に彼女を紹介したりといった微笑ましいエピソード、子どもに「父の存在」をどう伝えるかなどシリアスな問題まで、笑いを交えつつも、子どもと誠実に向き合い、悩み苦しみながら答えを探る“婦妻(ふさい)+兄弟3人”の日々が描かれている。
そして本作には、子育てと同量のボリュームで、妻とのコミュニケーション、関係性の変化が丁寧につづられている。同性・異性カップルに関係なく、子育て観の違いや役割分担、産後うつなど、育児は時にパートナーとの関係がすれ違うきっかけも生む。著者婦妻は、そのほころびを疎かにせず、何度もあらためて相手と向き合いコミュニケーションを重ねることで、関係を成熟させることの良さを見せてくれる。
「お母さん二人いてもいいかな」という言葉は、基本的には世間ではなく、3人の子どもたちへ向けた問いかけだ。それでも本作は、“お母さん”が何人でも、どんな形でも、日常生活を共にし、笑い合ったり頼り合ったりする時間の重みが、ゆっくりと家族をかたどっていくことを読者に伝えてくれる。冒頭から後書きまで、恋愛に限らない、広い意味での「愛って何だ」という問いと、その答えへの手がかりが、ぎっしりと詰まった1冊だ。
■『うちの子になりなよ』(古泉智浩、イースト・プレス)
さまざまな事情で実の親と暮らせない子どもを預かって育てる、「里親制度」。『うちの子になりなよ』は、この制度によって、生後5カ月の乳児を初めて預かった著者の1年を、文章とマンガでつづったエッセイ。
養子とは異なり、基本的には一時預かりである「里親」。子どもの親権は実親にあり、姓も実親のもの。あまり広くは知られていないこの制度についての基礎知識を得ることができるが、それ以上に「育児の楽しさを伝えたい」という著者の強い思いがこめられている。
里子であることに必要以上に焦点を当てず、育児の楽しさや赤ちゃんの日々の小さな成長が細やかにつづられる本作。もともとは子どもを持つことに興味がなかったこと、前妻の元に事情で会えない実子がいることを正直に語る著者だからこそ、その愛情深い育児日記自体が、「血のつながっていない子どもを、実子と同じように愛情を持って育てることができるのか」という、世間が反射的に抱える疑問への答えになっている。