カルチャー
血のつながらない子どもを育てるという選択【里親編1】

単身者でも“親”になれる 厚生労働省に聞く、日本の里親制度の課題とは?

2015/12/10 17:00

――社会的養護が必要なケースとは、どのような事情が多いのでしょうか?

担当者 さまざまな事情がありますが、最近は社会的養護を必要とする子どもの中で虐待を受けたことがある子どもは増えていますね。

――現行の里親制度には、どのような問題点や課題があると考えられますか?

担当者 日本は諸外国と比べて施設の数が多く、里親が少ないという状態だったため、いま国としては里親を増やす方針で取り組んでいます。施設は多様な子どもを受け入れられる体制ができていますが、その一方、里親家庭はそれぞれの持ち味があるので、なかなか施設のようにはいかないのが実情です。子どもと里親の相性があるのでマッチングが必要になってきます。

 あくまでも子どものための制度なので、子どもにとって一番いい状況をつくるため、マッチングが難しいところではありますね。また、養育に特に配慮が必要ということで、乳幼児を受け入れる里親さんが少ないのも課題です。だからこそ、ひとりでも多くの方に里親となっていただくことが求められています。

 あとは、預ける側の実親が里親制度を養子縁組と混同されていて、「今は養育が困難なので一時的に子どもを預かってもらいたいけれど、預けると親子関係を切られる」などと思われている方も結構いらっしゃるので、制度の周知も必要だと思います。

――今後、里親委託を推進していくにあたって、展望をお聞かせください。

担当者 里親になるにあたっては、子どもの最善の利益とは何かを考えながら、児相や里親支援機関といった外部の機関とも連携して子どもの養育を行うという意識を持っていただきたいと思います。社会的養護の理念である、「子どもの最善の利益のために社会全体で子どもを育む」ということをご理解いただき、ぜひ養育里親になろうと希望してくださる方が増えればいいなと思いますね。

 子どもにとってセーフティーネットとしての役割を担う里親制度。家庭生活を通して得られる学びは、子どもの成長に欠かせないもの。里親制度を利用して子どもを養育することが、大きな社会貢献であることは間違いないようだ。
(末吉陽子)

最終更新:2015/12/10 17:00
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