不妊治療6年間600万円の末たどり着いた「里親」という選択 漫画家・古泉智浩さん
――書籍では、「4人くらい里子を預かりたい」と書かれていましたが、そのお気持ちはいまも変わりないですか?
古泉 じつは最近2人目の里子を8日間だけ預かる機会があったんです。すごくおとなしくて、泣き声も小さい子だったのですが、あんまりかわいいと思えませんでした。赤ちゃんだったら無条件に可愛いはずだと思っていたのでショックでした。別れ際には急に寂しくなって泣いてしまったんですが、すごく挫折感がありました。1人目の子どもがもう少し大きくなってからだったら、また違ったかもしれませんが、1歳と乳幼児の2人を育てることの大変さを感じましたね。
――育児に手がかかる時期だと思いますが、そのあたりの大変さはいかがですか?
古泉 いま実家で地方在住なのですが、それほど大変さは感じないですね。東京は待機児童の問題など本当に大変そうですが、うちは母もいて妻の実家も面倒みてくれるので助かっています。あとうちの実家はお菓子屋を営んでいて、従業員の方もすごく可愛がってくれるんですよ。保育園に行かせてもいいんですけど、環境に恵まれているので当分いいかなと思ってます。
――子育てをする中で、手こずっていることはありますか?
古泉 食べ物を粗末にするんですよ、お味噌汁に手をつっこんだり、りんごをフォークで飛ばしたりするので、コラって怒るんですけど、口を「ぶうー」って鳴らしたり、べろを出したり反抗的なんです。怒るけどあまり言うことをきかないんですよ。強く叱るとかわいいポーズをとったりして、なんか取り繕っているみたいでおかしいですね。
――目下、子育てのことで不安なことはありますか?
古泉 もうちょっとで走りそうなんですけど、とにかく落ち着きがない子なので、自動車にはねられるんじゃないかと不安でしょうがないですよ。あと冬になったらストーブに手をつっこむんじゃないかと心配しています。
――今後の成長がとても楽しみだと思われますが、どんな子になってほしいですか?
古泉 明るく楽しい子であってほしいですね。あと早く一緒に遊びたいです。ゲームしたり、釣りに行ったりしたいですね。
里親制度とはあくまでも子どもを社会的に養護するための制度。しかし、いつかは実親のもとに返すことを前提にした制度のため、愛情を持って育てるほど葛藤を抱える里親が多いのも事実だ。そうした葛藤がありながらも里子のことを話す古泉さんからは、育児によって得られる喜びが生きる糧になっていることがうかがえた。実子であっても他人の子どもであっても、育児は人間に生きがいを与えてくれるものなのかもしれない。
(末吉陽子)