“近しい関係だからこそウソが大切”と説く、「婦人公論」の義理家族特集
■身内だからこそちゃんとウソをつきましょう
続きましては、「その年の汚れ、その年のうちに」ならぬ、「その年の愚痴、その年のうちに」の巻末特集「義理の家族」です。リードには「嫁いびりは過去の遺物!? 姑の権威が絶対だった時代は去りました。義理の家族のあいだでは適度に距離をおき、気を使い合う関係が増えています。でも、だからこそ胸のウチには不満がひそんでいるものです」とあります。胸にひそんでいるのならそのままにしておけばいいのに、そうはさせないのが「婦人公論」のいけずなところ。
歴然としたいびり・嫌がらせがあれば「NO」を突きつけられるものの、そうではないから厄介……というのが昨今の事情。読者アンケートにも「嫁はさんざん孫の世話を頼んできたくせに、私が体調を崩して入院したときには何もしてくれなかった。『薄情な嫁はいらない』と思うものの、本当に介護が必要になったときのことを思うと強く出られず悔しい」(81歳・無職)など、怒りの燃料が並んでいます。ちなみに個人的にグッときたのは「義理の姉とその娘は、下着すら持たずにたびたび我が家に泊まりに来る。先日は、1枚800円もする私の大事なショーツを勝手に穿き、『次に泊まりに来たとき返すから』と言われた。愕然」(53歳・事務職)という回答。「800円のショーツ」と「愕然」の文字の相性の素晴らしさ、これぞリアル。
アンケートで痛感したのは、義理家族との付き合いで最も大事なのは「距離感」だということです。ただ距離を取るのではなく、お互いに心地良い距離感が一致しないことによる不幸がある。例えば“勝手に冷蔵庫を開ける”という行為も、どちらか一方が嫌だと思えばプライバシーの侵害になりますし、双方が気にしないなら親密なコミュニケーションの証となる。婚姻により突然身内となるわけですから、その感覚はいかんともしがたいもの。義理の家族との衝突は、事故みたいなものなのです。
「水くさい」という言葉がありますが、近い関係だからこそ気を使わなければならないというのが、母・中村メイコ&娘・神津はづき&婿・杉本哲太の鼎談です。意外にも杉本と中村は初めての“共演”、鼎談中もあらゆる場面で気を使う杉本が印象的でした。神津は小さい頃、母親が出演する『お笑いオンステージ』を必ず家族で視聴し、「内心どう思っていようが、『ママ、最高、面白い』とほめたたえなくてはいけなかった」と述懐しています。「身内や大切な人に対しては、多少ウソをついてでも気を使わなくてはダメだと。父は言葉を使わずに教えてくれたのだと思います」。義理家族だけでなく、全ての人間関係において、ウソほど難しく大切なものはないのかもしれません。そして、ウソをついてくれているな、と感謝する心も。結局「信じられるのって素肌だけ」、その通りですよ桃井さん。
(西澤千央)