コラム
仁科友里の「女のためのテレビ深読み週報」

ロンブー淳夫人を「リスペクト」するくみっきー、その発言に見る“有名人妻”の資質

2015/11/19 21:00
『きゅん くみっきー』(学研教育出版)

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな芸能人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

「大きな事務所じゃないんですけど」舟山久美子
『旅ずきんちゃん』(TBS系、11月15日放送)

 いくら男女平等や女性の社会進出と言っても、“有名人の妻(専業主婦)”というのは、食いっぱぐれのない“職業”なのかもしれない。少なくとも、テレビを作る側は、“有名人の妻”は視聴者ウケするタレントと思い込んでいるのではないかと思うことがある。

 「ラグビーワールドカップ2015」で、日本代表は強豪国・南アフリカに奇跡的な逆転勝利を収めたが、こういうときもテレビは“有名人の妻”を放ってはおかない。今回の勝利の立役者である山田章仁選手の妻は、現役ハーフモデル。ビジュアルも申し分なく、『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)が、夫人を追っていた。

 体が資本の夫のために、夫人はアスリートフードマイスターの資格を取り、合計15品目の完璧な栄養バランスの料理を披露する。試合前は、ケガ避け祈願に恵比寿神・大国神にお水かけし、けれども夫にプレッシャーをかけないため「ケガしないでね」とは言わない。試合を見に行っても、ファンと夫の触れ合いを邪魔しないために、先に帰る。夫に監督へアピールをするよう促し、10年間代表に選ばれなかった山田選手を代表入りさせるなど、昭和の糟糠妻ばりの献身ぶりである。

 しかし、栄養バランスのいい食事を取っても、結果を残せない人は残せないし、監督にアピールしても、実績がなければ代表選手に選ばれない。つまり、山田選手の活躍は山田選手の実力によるものだし、誰のおかげを決める権利があるのは、結果を出した山田選手にしかないわけだが、どうも番組制作側は「夫の活躍は、妻のおかげ」、もっと言うと「夫が成功しないのは、妻の頑張りが足りない」という方向に持っていきたいようである。ちなみに、活躍する女性の夫の秘密に迫る“有名人の夫”という特集を同番組で見たことがない。「女は男に尽くして、大成させるべき」という制作側の意図が透けてみえるようだ。

 現在の肩書は一般人だが、元は芸能活動をしていて、そのときに培った人脈を駆使して、有名人男性としかつきあわない女性を指す“プロ彼女”。その言葉が、いつのまにか“完璧な彼女”と意味を変え、女性誌が特集を組みだしたのも、「結局こっちの方がラクだし、世間的なウケもよい」と、世間に漂う無言の空気を読んでの転換に思えてならない。

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