角川慶子×小阪有花「キャンセル待ち人気園でも2園目を出せない、ビジネスとしての保育園の限界」
■「悪いことをすると、ママ来ないよ」は保育士のNGワード
――以前コラムで、角川さんはパートスタッフについて「子育て経験はアテにならない」と書かれていました。保育園で働くスタッフの、向き不向きはありますか?
角川 子どもがいなくても、対応がうまい人もいます。初めはがんばっていたのに、しばらくすると疲れちゃったのか安心したのか、手を抜きだす人もいる。社員だったら試用期間を経て雇っているのでそういうことはありませんが、パートだとたまにそういう人もいます。
小阪 うちのスタッフは、基本的に子育て経験のある方ばかり。でも、やはり「もしかしたら、違う職業に就いた方がいいんじゃないかな」と思う人はいますね。とはいえ、それはその人の特質だし、それぞれいいところがあるから全否定するつもりはありません。ただ、安全が第一。危機管理能力は譲れない。それと、私は「子どもの気持ちに立つ」ということに重点を置いているので、言うことを聞かない子に対して「そんなことをしていると、ママ来ないよ」と言ったりするのは、保育士として絶対に許されない発言だと思いますね。
角川 それはダメダメ!
小阪 いいことしようが悪いことしようが、お母さんは迎えに来るのに、そういうことを言う人は意外と多いんですよ。大人目線で考えて、そういうことを言えば子どもが言うことを聞くと思っているようですが、誘導に母親を使う行為は絶対してはいけないです。
角川 お母さんは絶対的な存在だから、そういうことを言っていると、いずれ保育園に行きたくなくなっちゃいますよね。うちでも言うことを聞かせるために「鬼が来るよ」と言っていた人がいて。私が言うのもカドが立つので、リーダーを通して注意しました。
小阪 角川さんは、園児たちのことは平等に見ようと意識していますか?
角川 どの保育士も、それぞれ「○○ちゃんかわいい、○○ちゃんは苦手」というのはありますよ。人間だから、しょうがない。
小阪 やっぱり(笑)。でも、思いって無意識に行動に出てしまうじゃないですか。えこひいきはしないけど、「かわいいな」と思って見ている子は、やっぱり自分のことを好いてくれているから、私の思いが伝わっちゃったのかな、周りの子たちにこの思いの差をキャッチされていないかなと気になるんです。子どもたちの心に寄り添ってあげられる人間になりたいと思っているからこそ、逆に子どもの立場で考えると「もっと平等にならなきゃ」と葛藤する。
角川 仕方ないですよ。手のかかる園児でも、保護者がいい人だと「この人のためにがんばろう」と思ったりすることもあります。
――苦手な園児、イラッとくる園児には、どう対応していますか?
小阪 イヤなときはイヤだと直接伝えています。例えばひっかかれたら「先生、今のすごく怒ってるよ」と。感情を出すことで、イヤな気持ちも若干解消されるし。
角川 人それぞれですが、私が苦手なのは、お姫様然とした子。親御さんも、とにかく「かわいい、きれい」で育てているから、本当のお姫様みたいな性格なんです。私の場合は、苦手だという感情を表に出さないよう、一歩引いてほかのスタッフに任せています。
小阪 そういう子、うちの園にはいないけど、知り合いの子にいます。私も苦手かもしれないな。手がかかる子は、ある意味、お互い本音でぶつかり合うことができるので、気にならないですね。
角川 手がかかる子は、むしろかわいいですよね。
(後編に続く)
角川慶子(かどかわ・けいこ)
1973年、東京都生まれ。「角川春樹事務所」会長・角川春樹氏の長女。自身も元アイドルという異色の肩書に加えて、ビジュアル系バンド好きで、元バンギャルの”鬼畜ライター”としても活躍。11年9月1日に「駒沢の森こども園」をオープンさせる。家庭では7歳の愛娘の子育てに奮闘中。
小阪有花(こさか・ゆか)
1985年、神奈川県生まれ。講談社主催のグラビアコンテスト『ミスマガジン2004』でグランプリを獲得し、「小阪由佳」としてデビュー。スタイルを生かしたグラビアアイドルとしての活動や、ちょっと抜けた言動でバラエティ番組などで人気を博す。09年に芸能界を引退し、数々の保育園で働いたのち、15年春より保育園のコンサルタントをはじめ、「ウィズママ保育園」をプロデュース。現在は、片道2時間をかけながらも週3日は保育園に赴き、子どもたちと触れ合っている。