カッコいいとモテの矛盾に疲れた「CLASSY.」読者を癒やす、「愛が深まる服」という夢物語
たとえば「初のロングデート! ライダースを選びこびない印象で臨んで」というシチュエーション。ライダースジャケットにデニムを合わせ「気負いのなさ」も演出します。そしていざドライブへ。車に乗りこんだら「パーカ姿になり車中では親しみやすい女性像をアピール」です。さらに「夜はホテルのバーへ。白のとろみブラウスでとびきり女っぽく」。そう、これが脱ぐたびにワシづかみ3段階レイヤード。ライダースで媚びない私→パーカで意外と親しみやすい私→とろみシャツで実は女っぽい私→結果「彼との距離もぐっと縮まって」という、ドリーミングな内容となっております。ほかにも銀座でのショッピングデート編、表参道お散歩デート編などもございまして、厚着してもワキ汗大丈夫なお方、どうぞご参考になさってください。
読者が女性誌に求めるものは媒体によってさまざまありましょうが、「CLASSY.」に関しては“ザ・OL”で“オシャレ不得手”を自覚している20代後半~30代の未婚女性たちが、「ダサいと思われない」「悪目立ちしない」ファッションを知りたいという気持ちが一番強いのだろうと思います。それが「男性好み」で「結婚できる」ファッションとリンクしていた幸せな時代を経て、トレンドが「こなれ」となった現在、一つの雑誌の中で全ての要素を満たそうとすれば必ずや矛盾が生じてきます。だからこそ「彼のハートをワシづかみする3段階レイヤード」のような、テクニックと妄想をゴッチャにさせた、“なにコレ……”と一笑に付しつつも“ちょっと試してみようかな”くらいの企画が生きてくるのではないでしょうか。
“いい年なんだからカワイイから「カッコいい」ファッションに移行せな”という思想圧力にも“男たちにトレンドなんて関係ない! ガウチョ、ダメ、絶対”という男性ホンネ座談会にも、実は読者たちはピンときていないんじゃないか……というのは「CLASSY.」を読んでいてうっすら感じているところです。だからこそ、実践的かつ「CLASSY.」らしさも十分に加味されたこういう小企画が光って見えるのかもしれません。読者との方向性のズレ、トレンドとモテとのズレ、「CLASSY.」が一周回ってそういう矛盾を楽しんでいるなら読者もおのずとその波に乗っかることでしょう。女性誌と読者は一蓮托生、なんですもん。
(西澤千央)