「個性的に見えないオシャレ」を堂々と掲げる「美人百花」の“ファッション”へのジレンマ
■「浮かない」の進化系は「個性」を殺す!?
いかに「美人百花」ががんじがらめになっているかがわかる企画「個性的に見えないオシャレでカンタンな『色合わせ』カラーサンプル集」を見ていきましょう。「浮かない」「周囲に合わせる」といったキーワードは、ほかの女性誌でも頻出していますが、「個性的に見えない」というキーワードは、今までなかなかなかったのではないでしょうか。
具体的に「個性的」に見えてしまうかもしれない色に挙げられているのは、バーガンディやイエロー、ラベンダー、ブルー、グリーンなど。「美人百花」にとって馴染みのない色味だからこそ、コーデを工夫して、個性的すぎないように見せたいという狙いはわかるのですが、ひっかかるのは、個性そのものを否定している点です。
例えば、「美人百花」と同じアラサー向け女性誌「steady.」(宝島社)での「浮かない」ファッション特集は、「社会人としておかしくないか?」「上司に叱られないか?」といった視点によって構成されており、ファッションにおける“マナー違反”を恐れているとわかるのですが、「美人百花」が恐れるものは、単なる個性。個性的に見られることの一体何が怖いのかがよくわからないのです。
恐らく、社会で無難に生きるために個性をなくしたいのではないかとも思えるのですが、「この秋、モデルがオシャレに本気出す!」というページを読むと、その目論見が破たんしていると気付かされます。同ページでは、AKB48・小嶋陽菜、鈴木えみ、優木まおみなど「美人百花」のモデルたちが、自身の私服ファッションについて、「流行はポイントで入れて少し刺激を」「私のテーマはネオフェミニン」「シンプルに『ハンサム』が加わりました」など、ほかのページとはちょっと違い、芸能人らしい個性的かつこなれカジュアルなスタイルを紹介しているのです。
モデルたちの個性あふれるコーディネート企画と、無個性でフェミニンなコーディネート企画。その2つを読み比べると、ファッションのモードと、社会で無難に生きるために着る服の間にはかなりの深い溝があるように思えます。そしてその溝が1冊の雑誌に垣間見えてしまうところに、ファッション誌で「個性的に見えないオシャレ」を謳うことの難しさを痛感してしまいました。
(柴朋美)