中国版ジャニーズ系男子が登場!? 「小鮮肉」が中国人女性のイケメン像を変える
中国のネット上では日々、目まぐるしく新たな造語が誕生しているが、最近よく目にする単語がある。それが「小鮮肉」だ。イケメンを意味する新語で、10~20代の肉体美を兼ね備える美形男子のことを指す。日本で言うなら、ジャニーズのような男性アイドルといったところだろうか。
この小鮮肉という造語の由来を調べていくと、中国人女性の中の「イケメン像」の変化が見えてくる。一昔前、中国人女性のイケメンの定義は短髪で筋肉質、そして寡黙な硬派の男性だった。イメージで言うと、高倉健のような男性だろうか。その後、近年のネットなどの普及により、中国人のこれまで描いていたイケメン像に大きな変化が起こった。
隣国である日本のジャニーズアイドルや韓国のK‐POPアイドルグループの活躍を知るようになり、特に「80后」と呼ばれる1980年代生まれの世代の価値観に大きな変化をもたらした。中性的なルックスで、歌やダンスをする日本や韓国の男性アイドルに夢中になっていったのだ。そんなアジアのアイドル文化を享受するようになった中国ネット上で生まれた言葉が、「小鮮肉」なのだ。中国版Wikipediaである「百度百科」では、小鮮肉の定義を次のように定めている。
元EXOメンバーのクリスこと、ウー・イー・ファン。中華圏で絶大な人気を誇る
<小鮮肉とは12~30歳の女性のような美しさを兼ね備えた男性を指しており、新世代の理想の男性像である。小鮮肉の「小」は年齢が若いということを示している。「鮮」は恋愛経験が少なく、スキャンダラスなイメージがないフレッシュな男性であることを示している。「肉」は程よい筋肉で、健康的な男性であることを示している>
具体的に中国のネット上で小鮮肉と呼ばれる中国人男性アイドルを挙げてみると、確かにジャニーズのような中性的な男性がほとんどだ。中国広東省出身で韓国発のアイドルグループEXOの元メンバー・クリス(現在はウー・イー・ファン)や、同じくEXOの元メンバーで北京市出身のルハン(現在はルー・ハン)などが代表例といえるだろう。
北京市在住の日本人大学講師は、昨今の小鮮肉ブームについてこう分析する。
「中国では79年から始まった一人っ子政策の影響で、80年代以降に生まれた世代は弟や妹という存在に接することなく育った。彼女たちも30代となり、小鮮肉のような天真爛漫で美しい若い男は、“理想の弟”のような存在に映るのです。また50~60代の女性にとっては、母性本能がくすぐられるらしく、“理想の息子”として映るのでしょう。最近、北京でも高級外車を若いイケメンに運転させる中年女性の富裕層をよく見かけます。周囲に誇示したいんでしょうね」
実際に中国の芸能界では「姐弟恋」(年上の女性が年下の男性と恋愛すること)が急増し、ドラマの題材でも多くなっている。また、飲食店のイケメン店員の存在がニュースになることも最近では多くなってきた。男性アイドル市場やホストクラブの隆盛など、中国の女性を虜にする小鮮肉ブームは、中国人に新たな価値観をもたらしたのかもしれない。
(青山大樹)