墓守・介護・財産・遺族年金……入籍がゴールではない、中高年の婚活事情【中高年婚活編】
■「なんでこんな人と」と「1人で生きていくのか」のシーソー
――男女ともに婚活がうまくいく人の傾向、特徴はありますか?
立松 “条件の緩やかさ”ですね。もちろん、相手を選ぶ際に条件をつけるのは当然だと思います。やはり、女性は男性に経済力を求められるケースが多いですし、男性は女性に、若さや、きれいだったり、優しかったり、ということを求められますね。ただ、その条件があまりにも厳しすぎるとそもそもご紹介できる人の範囲が狭くなってしまうので、このあたりを緩やかにされた方が出会う機会も増えますし、パートナーを見つけやすいと思います。
例えば、「年下で、子どもを生んでくれる女性」を希望していた男性がいらっしゃったんですが、婚活がずっとうまくいかなかったんです。そろそろ活動をやめよう、と思った直前に参加したパーティーで子持ちの年上女性と意気投合し、今では2人の子持ち、とうれしそうに話されていました。ご自身のこだわりを取っ払ったときに素敵な出会いがあるケースが、本当にたくさんあるんです。
――希望を取っ払う、緩める勇気が問われるのかもしれません。
立松 「今まで1人で気楽に生きてきたのに、わざわざ苦労するような条件の人と結婚しなくてはいけないのか」というお気持ちもあって当然です。でも、突き詰めると結局、それと「このまま1人でいいのか」のどちらが重いのか、という問題になりますよね。
――大変だった要望、条件などはありますか?
立松 男性で「美人の女性がいい」と希望された方がいて、明らかににきれいな女性をご紹介したところ「(こんな人は)私のレベルじゃない」と……。もうこれ以上はご案内できない、となり、結局ご退会されたのですが。その男性は、自信を持つだけのことはあるご立派な経歴でした。ですが、プロフィールをよくよく見ると難しい年頃のお子様と同居で、ご長男で、ご両親もいずれは面倒を見なくてはいけない、と……。相手にすればその背景は重いですよね。きれいで、しがらみもない女の人がいたら、その人だって求めるものはありますよね。そういったご自身の背景や相手の要望を考慮することもなく、「私のレベルじゃない」なら、それは決まらないでしょう。
――50~60代の婚活は、特別なものではなくなってきていますね。
立松 婚活という言葉ができたのもここ10年くらいですよね。10年前くらいですと「迷った末、やっとの思いで来ました」という方もいらっしゃったのですが、最近は問い合わせも増えてきまして、ハードルがずいぶん低くなったと感じています。「貞女二夫に見えず(貞淑な女性は夫が死んだあとも、再婚することはない)」というかつての価値観は和らいできましたね。また、婚活をするにあたって「世間体が気になる、恥ずかしい」という抵抗感も根強くはありますが、こちらもご近所づきあいなどが希薄になり、個人の事情が詮索されるようなことも少なくなってきていますからね。
――「婚活」という言葉自体が大きな役割を果たしたんですね。
立松 2011年、震災の年も問い合わせが急増しました。「そばに誰かいてほしい」という思いが強くなったのでしょうね。「いくつになっても1人でいるよりパートナーがいた方がいい」という思いを持ち、それを求めて動くことがタブーではなくなったことはとても素敵なことだと思います。
(文・構成・石徹白 未亜)