岡田将生、『掟上今日子の備忘録』の世界にマッチする“薄っぺらい男”という魅力
日本テレビ系で土曜夜9時から放送されている『掟上今日子の備忘録』は、眠ると記憶が全てリセットされてしまうため1日以内で解決できる事件を専門に扱う名探偵・掟上今日子(新垣結衣)が主人公のミステリードラマだ。
原作は人気小説家・西尾維新のミステリー小説。『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』(講談社)でデビューして以降、ヒット作を連発している西尾の小説には、掟上今日子のような極端なキャラクターが次々と登場する。そのため、読んでいる時に浮かぶ映像は、実写というよりは漫画やアニメのようなポップでカラフルなイラストだ。
すでに『化物語』(講談社)などの作品がアニメ化されており、『めだかボックス』(集英社)では漫画原作(作画:暁月あきら)も担当していたが、実写ドラマは、今回が初めて。そのため放送前は、白髪のウィッグをつけたメガネ姿の新垣の姿を見て、若干不安に感じた。しかし、そこはさすが数々の漫画やアニメ原作モノを実写ドラマ化してきた日本テレビの土曜9時枠だ。テロップを多様することで、ポップでテンポのいい西尾の世界観をうまく実写ドラマに落とし込んでいる。正直、ここまでテレビドラマと相性がいいのかと、驚かされた。
西尾がデビューした講談社の「メフィスト賞」は、1994年に『姑獲鳥の夏』(講談社)でデビューした京極夏彦をきっかけに翌年創設された新人賞だ。森博嗣、清涼院流水、舞城王太郎、辻村深月などといった個性的な小説家を生み出してきたミステリー作家の登竜門とでもいえる賞だが、その中でも最大のヒットメーカーとなっているのが西尾である。
有名作家のデビュー以外にもメフィスト賞が日本のミステリー小説に与えた影響は多岐にわたる。中でも一番大きかったのは、いわゆるトリック(事件の謎解き)ではなく名探偵というキャラクターの魅力で物語を引っ張るようになったことだ。西尾はその極北とでもいうような作家で、そのため若い世代からは絶大な支持を受けている。
興味深いのは、メフィスト賞が牽引した名探偵のキャラクター化は、『ケイゾク』(TBS系)や『トリック』(テレビ朝日系)などのテレビドラマでも同時に起きていた現象という点だ。テレビドラマにおけるその源流こそが、土曜9時枠の『金田一少年の事件簿』(日本テレビ系)であり、西尾小説がこの枠でドラマ化されるのはある種の必然だったと言える。むしろ遅すぎたくらいだ。