「女は顔、男は金」時代の終わりを感じさせる、「VERY」の似たもの夫婦たちとは?
■風呂事情に見る悲しい現実
同じ特集の中で紹介されている「家族でお風呂、夫婦でお風呂のススメ」も気になりました。なんでも「オシャレ夫婦の秘訣はここにありました」とのことで、一緒にお風呂に入ると「旦那さんとの関係修復」につながり、「精神安定剤」代わりにもなり、また「頼みごとや深刻な悩みを相談」できるそう。そして極めつけは「産後のセックスレスも“ま、いっか”と思えてきちゃう」というのです。
この女性は、「正直、セックスがないことを悩んだり、不満に思ってはいましたが、お風呂に一緒に入ることで肌が触れ合うし、もしかすると見られているかもしれないと思うと体型に気をつけるようになったりと意識するのも事実。旦那さんが私の背中を洗ってくれるたびに、セックスがなくても満足できます」と思っているそう。正直、別にセックスがあってもなくても、夫婦がいい関係ならばそれでいいのでは……とも思いますし、むしろ「旦那さんにお風呂に一緒に入って“いただいてる”」感覚の方が気になります。この夫婦、ほかの場面でもずっとそういう関係性なのではないかと心配になってしまいました。
数号前の20周年特集号では、「VERYから、読者の旦那さまたちへ」と銘打ち、「奥さんに『ありがとう』と言うまえに、ストックのキレそうな、トイレットペーパーを買ってこよう」と発破をかけていたのに。この「お風呂に一緒に入っていただいている」という女性に対して、「VERY」は「トイレットペーパーを買ってこい!」と旦那に言える主婦を目指していたのでは……と思ってしまいました。
■燻製職人気取りのイケダンを笑う!
そんなモヤモヤを抱えていたところ、後半に「『なんちゃってイケダン』に気をつけて!」という読み物ページがありました。座談会では、妻たちが「『オシャレで素敵なパパである自分』をオープンな場所で楽しんでいる」「BBQグリルデビューをしてにわか燻製職人気取り」「オムツ替えでうんちのときはいつも私頼み」などと夫にツッコミを入れていて、なんだか「私とも話が合いそう……」と思わせてくれます。
ただ、夫の悪口では終われない「VERY」のお約束によって、後半は夫をおだてて操作するのが賢い妻という流れになるのですが、それはやはり彼女たちが、根本的には「夫には大黒柱でいてほしい」と思っているから。自分が稼ぎ柱になるのは無理、主夫になりたい、給料が減るけれど時短勤務にしたいといわれても困る……そんなふうに感じているのではないでしょうか。
今の日本の雇用や賃金の状態では、イケダンを気取る夫を冗談めかしてツッコむことはできても、「仕事はそこそこでいいから本気で家事に励め!」とはいえない事情があることが、このページから見えてきました。そう考えると、「セックスレスでも、お風呂で触れ合えたからいっか……」と、妻が夫に遠慮しないといけない家庭の事情も納得せざるを得ないのでしょうか。
(芹沢芳子)