カルチャー
[女性誌速攻レビュー]「DRESS」10月号

「DRESS」が一大リニューアル! 正体不明の新テーマ「つかむ女」が意味するモノ

2015/09/08 19:00

 モデルチェンジした新生「DRESS」、冒頭の編集長コラムによると、変わったのは紙の種類や製本方法(中とじになりました)とのこと。また今後は、読者のライフスタイルを元気にする雑誌にしていくのだとか。じゃあ今までの「DRESS」はなんだったんでしょうか……。今までも、「独身の読者さん、今からでも遅くないですよ」というメッセージ企画「晩婚さんいらっしゃい」にしても、「女性ホルモンが減少しておっさん化してるけど、いいじゃないですか?」といった「オヤジョ」企画にしても、編集部としては同じように「読者のライフスタイルを元気にする」という意識を持っていたように思うのですが。もちろん、読者に響いたかどうかは別にして。

■悩めるアラフォー読者と「つかむ」の親和性

 そんな中印象的だったのは、甘粕りり子さんの連載「生涯嫁入り前」です。ご自身は、結婚、同棲、中絶、離婚といった経験が一切ない「独身のロイヤル・ストレートフラッシュ」なのだとか。「結婚しないで仕事に生きる!」というような確固たる決意があったわけでもなく、今の状態になったという甘粕さん。こういう人、ものすごく多そうです。今や、結婚・出産って、血眼になって猪突猛進しないと自然発生的にはしにくいような気がします(いえ、もちろん自然の流れで結婚に至る人も多いと思いますが)。

 甘糟さんは、「結婚や出産をしていたら、また違った人生だっただろう」と言いながら「後悔はしていない」と語っています。意識していようがいまいが、自分の歩んだ道に自信を持たなくてはいけない。実際に経験できることなんてそれほど多くないのだから、手に取らなかった物事をあれこれ吟味するのは時間がもったいない、と。

 アラフォーである筆者も感じるのですが、アラフォーとは、だんだんと女としての機能や若さを失っていくことを実感する年代。手の中の水がどんどんとこぼれてなくなるのを見つめていくような気分で過ごす人も少なくないのではないでしょうか。「以前ならできたはず」のことを振り返って、自分の計画性のなさを悔やむ人もいるでしょう。でも「元々そんなにたくさんの可能性があったわけじゃないよ」と言われると、自分に少し自信が持てます。甘粕さんのコラムを読み、自分には無限大の可能性があったわけではなく、そのときそのときに一番自分にフィットする選択を繰り返してきただけなんだ、と思えました。

 なるほど、そう考えると、少なからず喪失感を感じているアラフォー女性を元気づけるための言葉が「つかむ」なんですね。「引き留める」というネガティブな言葉でもなく、「奪い取る」という暴力的な言葉でもなく、「つかむ」。現在、いろんなものをつかんでないアラフォー女性は、読むとつかめるかもしれません。

 ただ筆者としては、今までの「DRESS」とどう違うのかよくわからなかったのも事実。「やっぱり人とうまく関係を築いて人生の可能性を広げるのは、ポジティブシンキングと相手に対する敬意だよね~」と再確認したくらいです。「つかむ」=人生を上向かせること、と捉えると、その方法があれこれ書いてあるので、現実的なおまじないって感じで、スピに近い特集だったのかもしれません。
(増井涼子)

最終更新:2015/09/08 19:00
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