[女性誌速攻レビュー]「CLASSY.」9月号

UNIQLOやGAPをモテ服と紹介する「CLASSY.」のコピーが、イイ感じに狂ってる!

2015/08/13 15:30

 
 そしてこの精鋭揃いのラインナップで最も際立っていたのが、「親しみやすい嫁っぽさ」部門です。こちらUNIQLOのパーカー、ZARAのチェックシャツ、PLSTのゆるニットが代表アイテム。「二人でいると優しい気持ちになれたり、お互いを癒し合えたり。一緒にいる時間が長いからこそ、気合の入った服はたまにでいい。必要なのは、なんてことない場所を彼と二人で並んで歩ける安心感のある服。“普通なのに可愛い”が叶ったら、お嫁にいくのも近い!?」と「嫁っぽさ」を説明していますが、ちょっと待って……前号でアンタらスニーカーにダメージデニムは貧ぼっちゃまとか、近所のコンビニに行くのが限界なアイテムとか言うとったやないけ!!

 この企画から学ぶべきは、最初から「親しみやすい嫁っぽさ」はNGということ。UNIQLOのパーカーが許される段階に行くためには、海辺でショーパンはいてはしゃいだり、ノースリーブブラウスで後輩女子出し抜いたりして、長いトーナメント戦を勝ち残る必要があるということなのです。モテ甲子園への道、神奈川県予選並みに非常にキビシ~。

■オシャレを隠れ蓑にした、夫婦の主導権争いがスタート!

 引き続き特集内から、「CLASSY.」には珍しいページがありましたので紹介します。「“ちょいダサ彼”がデイリーブランドで大変身!」は男性の変身企画です。今まで“ちょいダサ私”の変身企画は数多くありましたが、男性バージョンはあまり見たことがありません。「オシャレなデートがしたいのに、彼の服がイマイチ、と思ったことはありませんか? せめて“普通”の服を着た、程よくオシャレな彼でいてくれれば……」とはリードの弁。「せめて“普通”」というのは、実は「CLASSY.」が長年をかけて提唱してきた「こなれ」の裏テーマ。とびきりオシャレじゃなくていい、個性的でなくてもいい。街で浮かない、悪目立ちしないファッション。かつて「第一印象で記憶に残らない服」を究極のモテ服として紹介したこともある「CLASSY.」が、その理念を男性へと投影しようということでしょうか。

 登場するのは3人の男性。2人が既婚者、1人が婚約中。なるほど、賃貸ではなく分譲物件だからこそ思い切った改造もできるということか。「優しい彼との結婚生活に幸せを感じる一方、若い頃にB系だったいまだに抜け切れない彼の子供っぽいファッションセンスに不満あり」「学生時代にミスコンのグランプリに輝いた彼女と、休日はポロシャツ&短パンスタイルが鉄板の体育会系な彼(中略)優しく包容力があって大好きだけど、もう少しオシャレに興味を持ってほしいという本音がチラリ」。優しくて稼ぎがあれば夫として十分な気もしますが、「並ぶとなんだかチグハグに見える私たち」がご不満な様子です。


 凄腕スタイリストにより、三十路Bボーイはナオト・インティライミ帽の中目黒風伊達男に、万年チノパン男性はモノトーンのイケてる公務員風に、体育会系ポロシャツマンはパーカー肩かけの都会派テレビプロデューサーに見事変身していました。そしてあらためて理解したのです。オシャレとは個性を奪うものであることを。ビフォーから色を引いて、白・黒・グレーを足したらオシャレなアフターのできあがり。これがいいのか悪いのかはわかりません。ただ「CLASSY.」女子が望むオシャレなダンナとは、街の景色に溶け込むこういうスタイルなのでしょう。そしてそれは男性座談会で散々言われてきたことと同じなのです。

 「既婚者or婚約者」限定で行われたことに深い感慨を覚えずにはいられないこの企画。結婚するまでは自分自身を彼の好みに合わせることに終始し、いざつかまえたら今度は男を自分好みに作り変えたい。それはオシャレコンプレックスに悩んできた「CLASSY.」女子が元々オシャレにこだわりのある男性には引いてしまう……という見方もできそう。妻&婚約者座談会での「一緒に並んだ時にお似合いの二人に見られたいね」発言から見える、“私はイケてるのに”という確かな自信。その根底にはやはり“結婚にこぎつけた”事実が横たわっているに違いなく、このオシャレをめぐる生態系の深き業にしばしめまいを覚えたのであります。
(西澤千央)

最終更新:2015/08/13 15:37
CLASSY.(クラッシィ) 2015年 09 月号 [雑誌]
ユニクロは外国人モデル並みのスタイルじゃないとオシャレにならない現実