カルチャー
[女性誌速攻レビュー]「ar」8月号

「モテるために趣味を」と啓蒙する「ar」を覆した、ジビエ女子・釣り女子のガチっぷり

2015/08/03 21:00

■着回しページに象徴される「ar」読者のあいまいな実態

 夏の着回しコーディネートを紹介する「SUMMER 31 DAYS」を見てみましょう。着回しに添えられるテキストは雑誌のカラーがよく表れるため注目のページです。この企画の主人公は、「夏のために生きてる27歳の女の子、彩未。仕事も楽しいし、5年付き合ってる彼氏あり」とざっくり。その日々を見てみると、家飲み→ブルーノート→女飲み→クラブ→女友達と南伊豆→彼と北海道→ビアガーデン→女子会→花火大会→プール→ナイター観戦→フェス、と飲んで遊んでばかり。9月もフェスとキャンプの予定が入っているそう。ここにツッコミを入れるのはバカバカしいとは思いつつ、あまりの放蕩っぷりに呆れました。

 ほかの雑誌では、職業や夢などが具体的に語られていることが多いのですが、「ar」ではパーソナリティではなく行動に重きを置いている点が特徴。これは“あえて”なのか“考えなし”なのでしょうか。あまり深く考えた結果ではないような気がしますが、「ar」の読者像を考えてみても、具体的に思い浮かびません。学生もいるでしょうし、OLもいそう。年齢層も10~30代、どの層もいそうです。職種や具体的なライフスタイルなどをカッチリ設定しないのは結果オーライといえるでしょう。

 また、家飲みや自宅でスキンケアをするとき、旅先での部屋着など、リラックスタイム用のウェアの着回しが含まれているのも、ほかの雑誌にはない「ar」ならではの特徴です。常々「ar」は、不特定多数にモテることよりも、彼氏との時間を大切にすることを提唱しており、それが部屋着(=おうちデート時の服装)へのこだわりに結びついているのかもしれません。余談ですが、「好きなDJが来日とあれば踊りに行くに決まってる」という日の説明文の中にあった「はー、音最高。」という一文には、「ar」女子のいっちょ噛み具合が表れていて笑えました。

■ほかの方々に失礼な企画

 「長くモテる○○女子」というページは、「話題が豊富になって男友達が増えたり、世界が広がって“出会い”があったりとモテのきっかけをゲットできる」「彼と一緒じゃない時間も充実して過ごせるから、いつだって輝いていられる!」という理由から、読者に趣味をつくろうと促す読みもの企画。ゴルフ女子、釣り女子、プロレス観戦女子など、○○女子にインタビューしています。しかし、動機が邪すぎ! 逆を考えてみればわかると思うのですが、「女と出会える」「自分が輝ける」という理由で男性が趣味を始めたら気持ち悪くないですか? そういう想像力が働かないのか、女だけ特別なのか、と疑問に思います。

 しかし、インタビュー部分をよく読んでみると、「釣り女子」は釣り師の船に1人で乗せてもらって行くほどハマっている人、「DJ女子」は2万人規模のフェスで活躍するプロ(=ギャラをもらっている)、「ジビエ女子」は食材に感謝し狩猟免許取得をめざしている人。「モテのきっかけをつくる」ために始めたいというのはおこがましいほど、ガチの方々なんです。趣味ってそれくらいどっぷりハマらないとおもしろくないでしょうし、長く続かないですよね。長く続けた結果として、もしかしたら輝けるかもしれない、人脈が広がるかもしれないけれど、自分が輝くことや男友達を作ることが目的ではないはず。「ar」編集部の浅はかな考えを、登場した趣味に生きる女子が覆してくれたいい企画です。

 「ar」は能天気なところがウリなのですが、今月号ではそれが行き過ぎて単なるバカな女みたいになってしまっていました。逆説的に考えると、誌面に書いてあることを鵜呑みにしないで、自己責任で情報を取捨選択する技術が身に付きそうとも言えるのですが……。
(亀井百合子)

最終更新:2015/11/26 23:57
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