コラム
仁科友里の「女のためのテレビ深読み週報」

水卜麻美アナの快進撃を支える“ネオ自虐”――「私はモテる」という勘違いの笑いとは?

2015/07/23 21:00

 女子アナは会社員なので、常にタレントを立てなければいけない存在であり、自己主張するのはよくないこととされる。特に女子アナが「自分はモテる」と解釈されるように振る舞うことは、好感度にも響きかねない。にもかかわらず、空気を読むことに長けた水卜アナが、なぜあえてこの話題に自ら突っ込んでいったのか? これこそ水卜アナが新しく作った自虐だからである。

 有働アナの自虐は、さまざまな条件(ミスコンの覇者、既婚者)を満たさないことを笑いに持ち込み、「私は勘違いしていない」ことをアピールするが、水卜アナは、選ばれると思ったのに選ばれなかった自分の「勘違いを笑う」自虐である。

 水卜アナの作った“ネオ自虐”は、お笑いの世界にも波及している。人気急上昇中のお笑い芸人・おかずクラブのオカリナとゆいPが、『櫻井有吉アブナイ夜会』(TBS系)において、パーティードレスを買いに行ったが、会計時、お金が足りないことに気づく。番組の男性プロデューサーがお金を出してその場はしのがれたが、その際にオカリナは「男の人って最高!」と発言する。

 男性プロデューサーがお金を出したのは、番組の進行を妨げないためだろう。そこをあえて自分への好意のように勘違いした表現を取るのは、「女芸人はモテるわけがない」という固定観念を逆手に取った“ネオ自虐”なのである(余談だが、『今夜くらべてみました』(日本テレビ系)において「オトコに困っていない」「恋はすべき。キスも人によって全然違う」などいい女ぶる芸風で注目されている芸人・相席スタートの山崎ケイも、“ネオ自虐”の体現者である)。

 自虐売りをする人ほど、わかりやすい形の幸福を手に入れてはならない。女子アナの場合は、プロ野球選手など、高収入男性との熱愛発覚がそれに当たるが、水卜アナはそれもクリアするタイプだろう。天下の人気女子アナがモテないわけはないが、水卜アナ、結構気が多いのだ。『しゃべくり007』(同)で、チュートリアル・徳井義実の公開告白を断らず、「週刊朝日」(朝日新聞出版)の林真理子との対談で「お金持ちと結婚できますよ」と水を向けられて否定しない。先日、「週刊文春」(文藝春秋)に、共演者である関ジャニ∞・横山裕との密会写真をスクープされたが、男に関してもなかなかの食べっぷりである。こういう人は恋愛が長続きしにくいので、自虐の芸風が長持ちするのだ。

 “リア充”が世間から敬遠される昨今、モテの代名詞である女子アナも、非モテのシンボルである女芸人も、いかに自虐をうまく扱うかがキモとなる。抜きん出て自虐使いに長けた水卜アナの快進撃は、当分続くことだろう。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。
ブログ「もさ子の女たるもの

最終更新:2015/07/27 16:30
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