水卜麻美アナの快進撃を支える“ネオ自虐”――「私はモテる」という勘違いの笑いとは?
羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな芸能人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今回の芸能人>
「私、結構有利だったと思うんです」水卜麻美
『ヨルナンデス!』(日本テレビ系、7月15日放送)
女子アナの世界に、“自虐”を持ち込んだのは、NHKの有働由美子アナウンサーであることに異論はないだろう。お堅い局のアナウンサーが、自らの容姿や結婚できないことを自虐する。他人が言えばハラスメントだが、個人がいう分には問題はないし、なんせそんなことを言う女子アナは珍種ゆえ「さばけている」「女子アナなのに気取っていない」と、私のようなひねくれ者をのぞいた多くの視聴者から好感を稼ぐことができる。
有働アナの自虐は「女性は結婚して子どもを産んで一人前」「視聴者は、ミスコン出身の女子アナを見たがる」という旧時代の固定観念から生まれているが、その背景には「私は勘違いしていません」というメッセージが隠されているように見える。
ただ、この自虐には飽きがくる。「40代を迎えた日本有数のキャリアウーマンがいつまで自虐してんだ」と食傷気味に感じている人は、多数いるだろう。有働アナが持ち込んだ自虐の芸風は女子アナ界から消えるのかと思いきや、すごい後継者が現れた。日本テレビアナウンサーの水卜麻美である。
水卜アナは、「週刊文春」(文藝春秋社)主催の好きな女子アナランキングで、2014年の春と秋連覇を果たした人気女子アナ。くしくも、有働アナと同様に、ミスキャンパス出身ではなく、ほかの女子アナのようにスレンダーでもない。食べっぷりと肉付きの良さが魅力の水卜アナは、有働アナと同じく“異色の女子アナ”である。
水卜アナも、なかなかの自虐上手である。例えば、『24時間テレビ37 愛は地球を救う』(日本テレビ系)の制作記者会見では、共演者に、昨年パツパツだったチャリTシャツに余裕があることをつっこまれると、「今日は一番小さいサイズじゃないんです」と自虐して、笑いを誘った。ぽっちゃりを否定しないあたり、自分の魅力を知り尽くした水卜アナのウマさと言えるだろう。
しかし、水卜アナと有働アナでは、自虐の方向性がはっきり違うことが、『ヨルナンデス!』(日本テレビ系)で明らかになった。歌舞伎俳優・片岡愛之助に、島崎和歌子、いとうあさこ、森三中・黒沢かずこ、はるな愛、水卜アナから好みのタイプを選ばせるという場面があったのだが、愛之助ははるなを指名し、女性陣は「無難な方にいった」と不満げだ。水卜アナもその1人で、自分が選ばれると思ったらしく、「私、結構有利だったと思うんです」と述べた。