香山リカ×小島慶子の「気が合わない」対談に、「婦人公論」の存在意義を見た!
■わかり合いたい風、という大人の装い
さて続いては巻末小特集「職場で言えない女の本音」です。「男性社員のセクハラ発言に、上司やお局様からのパワハラ、正社員とパートの待遇格差、女性社員同士の独特のルール……。職場での不満を数えあげたらキリがないけれど、働きづらくなるのがイヤだから波風立てないように我慢している。普段は押し殺しているそんな胸の内を誌上で激白!」とはリードの弁。ネットに触れない人たちの掃き溜め「婦人公論」ならではの企画ではないでしょうか。
読者アンケート「仕事量、給料、人間関係……私が腹にすえかねているのは」では、「仕事や職場に不満がある?」に80.8%の人が「はい」と回答。「職場で好きになれない人はいる?」には74.5%が、「待遇面で不平等だと感じることがある?」では61.7%が、それぞれYESと答えています。「女は出世できないという暗黙のルールがまかり通る職場。お茶汲みとコピーは女の仕事だと思っている男性しかいない。外線電話にも出ないし、来客があっても素知らぬふり。時代錯誤もいいところです」(44歳・サービス業)など古い体制への不満もあれば、「昔は生理休暇もなかった。今の人は甘えすぎ。権利ばかり主張するのは違う気がする」(70歳・ソーシャルワーカー)と今どきの若者批判も。“私の正義”と“私の正義”がサイレントでせめぎ合う、それがニッポンの職場。
そんな思いをさらに強くさせたのが、精神科医・香山リカと元TBSアナウンサーの小島慶子の対談「同僚は友だちじゃないから気が合わなくて当然です」。2人がアンケート結果を読み解くという趣旨ですが、本当に「気が合わなくて当然」と思わせる良対談です。
気の合わなさが特に顕著だったのが、“子どもを持ちながら働く”という話題に及んだとき。「少子化問題もあって、仕事をしながら子育てをすることが『偉いね、がんばって!』と評価されるようになりました。その反面、仕事だけしてきた私たちは、やるべきことをやっていないと思われているんじゃないか、と。子どもがいないことをまるで犯罪みたいにとがめる視線を感じるのです」「一緒にしちゃいけないと思うけれど、『子どもの熱が出たから帰ります』とは言えても、『今日はファイターズの試合があるから』では帰れない。子どもがいる人は、どうしてあんなに堂々と権利を主張できるんだろう、と思うことがある」とぶちまける香山に、「ほっといたら死んじゃう、ということがあるでしょうね。(中略)子育ては、社会の構成員としていずれ自立させなければならないという責任がある点で、愛玩して暮らすペットとは違いますし」と返すしかない小島。その後すぐに香山が「女性同士、もうちょっと互いに尊重し合えればいいのに、と思います」とのたまうのも地獄感アリアリです。わかり合えないけど、ちょっとわかり合えた風にする、でもやっぱりわかり合えない世界、この矛盾に「婦人公論」が100年近く存在する意義を見た気がするのです。
(西澤千央)