[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」7月28日号

香山リカ×小島慶子の「気が合わない」対談に、「婦人公論」の存在意義を見た!

2015/07/23 17:00
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「婦人公論」7月28日号(中央公論新社)

 7月16日に衆議院を通過した安全保障関連法案。国会の事前承認さえあれば自衛隊を紛争地に随時派遣することを可能にする「国際平和支援法案」と、自衛隊法など10の現行法改正案を束ねた「平和安全法制整備法案」との二本柱がmあれよあれよという間に強行採決されました。また6月に行われた衆院憲法審査会の参考人質疑では3人の憲法学者が安保関連法案を違憲と指摘するなど、専門家も政治家も世論も大きく揺れています。

 安保法制はヤバそうだけど、具体的にどういう未来が予測されるのかがよくわからないという人も多いのではないでしょうか。「婦人公論」(中央公論新社)では国際政治学者の三浦瑠麗、安全保障論が専門の国際政治学者・植木千可子、コラムニストの深澤真紀の3人が安保法制を解説しています。題して「“安保法制”私はこう考える」。この手の問題は右か左か、賛成か反対かの両極端に分かれがちですが、3者の意見には絶対的な「賛成」も「反対」もありません。事情を知るほどにYES/NOと言い切ることが難しくなるのが国際問題。ただ安全保障に関してトーンの異なる2人の学者も“集団的自衛権は、いずれ向き合わなければならない問題。でも安倍政権の方針はダメ”に落ち着いているところがリアル。国際社会で生きていく以上、「自衛と平和」問題から逃げることはできず、月並みですが、国民が政府から“時間がたてば忘れるだろコイツら”とバカにされないことが最も大事なのではないかと考える次第です。

<トピックス>
◎“安保法制”私はこう考える
◎特集 ぴんぴん老後は「健康寿命」で決まる
◎職場で言えない女の本音

■“枯れる老人”は幻想

 さて今号の特集は「ぴんぴん老後は『健康寿命』で決まる」です。「健康寿命」とは「介助を必要とせず日常生活を送れる」体のことで、“ぴんぴんころり”信仰の強い「婦人公論」ではなによりも尊い財産とされるもの。管につながれて、オムツをつけて、自分が誰だかわからない状態で長生きしていても意味はない。親の介護で苦労している世代は、特にその思いが強いようです。ページを開けば、ありとあらゆるご長寿健康法のオンパレード。「“ピンコロ”を希望するあなたへ 専門家が説く健康維持の4ヵ条」「認知症を予防する歯磨きのコツ教えます」「40代から増える排泄トラブル。“骨盤底筋”を鍛えてQOL(クオリティオブライフ)を保つ」などの老体ケアから、「顔より年齢が出やすい首・手・髪の簡単&再生ケア」など見た目年齢アップまで、ぴんぴん老後にかける「婦人公論」の並々ならぬ熱意を思い知らされます。


 そんな中、注目したいのは、実際にぴんぴんライフを実現している猛者たちのルポ「最高齢は111歳! 体も心も充実しています」。ここに登場する3人の女性は91歳、111歳、104歳。しかも全員現役バリバリ。91歳の女性は有料老人ホーム「シルバーヴィラ向山」の創業者で現会長、111歳の女性は「100歳を超えてアメリカ旅行に出かけ、111歳の今、詩吟や百人一首に励む」日々、104歳の女性に至っては100歳でブログに俳句を投稿、「これから作りたいのがBL俳句」「104歳でエロスが売りの生ぐさい老人でございます(笑)」と現役腐女子を自任。もはやぴんぴんどころかビンビンです。

 このビンビン女子たちに共通するのは、一向に枯れた様子がないところ。91歳老人ホーム界のゴッドマザーいわく「息子より若い40代のボーイフレンドがいますけど、新たに募集もしてるのよ。私、人の面倒を見るのもマメですけど、根っからのラテン系で、男性にもマメで(笑)」。映画『戦場のメリークリスマス』を見て以来そちらの世界にハマったという104歳腐女子は、「トシをとればとるほど書くものが自由になっていく気がします」と<木の皿に割礼二体クレソン添え>(※映画『ラストエンペラー』で見た宦官の去勢した性器のイメージから創作)なんていう大胆過激な一句を詠んでます。クレソン……!

 カネでもない、美貌でもない、才能ともまた違う“生命力”。ビンビン女子たちを支えるものはまさにそれ。生命力を試される長い長いトーナメントを勝ち抜いた者だけが「ぴんぴん老後」という栄誉を手に入れるのでしょう。筆者も『ラストエンペラー』を見て出直そうと思います!

婦人公論 2015年 7/28 号 [雑誌]