カルチャー
[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」7月14日号

夫に失望している「婦人公論」読者に届くか? 病も極貧も乗り切った、夫婦の形

2015/07/02 19:00
「婦人公論」(中央公論新社)7月14日号

 前回のレビューでお伝えした瀬戸内寂聴×山田詠美の対談、せっかくなので後編「シャンパンも恋愛も、すべては小説のために」も紹介したいと思います。他界してしまった同世代のライバルたちへの愚痴から、なかなか文学賞に恵まれず「もし来たら断ってやろうと思って、『辞退の言葉』というのを書いて暗唱していたの」「(谷崎潤一郎賞の受賞が決まったとき)辞退の弁を言うべきなのに、全部忘れて、気が付けば『ありがとうございます』と電話にペコペコ頭を下げていた(笑)」という“寂聴瀬戸内のスベらない話”まで、後編も結局己の煩悩さらしまくりの寂聴先生。それに対し、「私は普段、市井の地味なおばさんの仮面を被っているんですよ。でも、内心不道徳な渦巻いています」と山田は達観コメントを貫きます。そして対談のハイライトはこちら。

「詠美さんは次から次へと男の人ができるでしょ。何人代わってもいいから、最後まで恋はしたほうがいいわね」
「これは、夫に読ませないようにしなくっちゃ(笑)」
「そんなに彼のことが好きなの? でも詠美さんはその時々の人がとても好きじゃない」

 出ました~! “物書きはいつも恋してないとアカンねん、な!”思想(feat.倖田來未)VS不道徳な「市井の地味なおばさん」最強説。しかしどんな不道徳も煩悩も、小説に還元されれば万事OKというこの世界。それは「婦人公論」(中央公論新社)に婚外恋愛手記を送る読者にも通じるものがあるような……。

<トピックス>
◎瀬戸内寂聴×山田詠美 シャンパンも恋愛も、すべては小説のために
◎特集 どこで差がつく? 金持ち母さん、貧乏母さん
◎女性に急増 心の病に気づくには

■捨てる神あれば拾う神ある、結婚

 今号の特集は「どこで差がつく? 金持ち母さん、貧乏母さん」です。“モノは捨てろ、カネは貯めろ”が合言葉の「婦人公論」ではおなじみの企画。一体いくら貯めれば「金持ち母さん」になれるか、「正社員夫と専業主婦の場合」「正社員夫と非正規社員妻の場合」「自営業夫婦の場合」「シングル非正規社員の場合」とそれぞれ算出されています。これを見るにやはり妻が働いていないと、老後の「ゴージャスコース(年金収入と貯蓄が十分にあるため、趣味と娯楽にお金をかけることができる)」も「ゆうゆうコース(年金収入と貯蓄で、生活にある程度のゆとりがある)」も達成するのが難しそう。特に「シングル非正規社員」は、「ゆうゆう」はおろか、「清貧コース(年金頼みで、生活にほとんど余裕なし。プランターで育てた野菜を食費の足しに、区営プールとシルバー割引フル活用)」も厳しい様子。夫婦仲の特集では、夫に“一刻も早くあの世へ行って欲しい”と願いながらも別れはしない「婦人公論」読者にはこんな事情もありそう。おカネ、大事。

 この特集、ただただお金を貯めろと啓蒙するものではありません。今号はそれより“天国と地獄の両方を経験してお金の価値に目覚めた人たち”にスポットライトが当たっています。「林マヤ パリコレモデルから急転直下。猫缶で飢えをしのぐ赤貧の日々へ」「宮脇健『ケーキ屋ケンちゃん』、億の借金を完済できたのは妻のおかげです」。信じられないバブル生活から一気に奈落の底に落とされた2人のインタビューです。

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