カルチャー
[女性誌速攻レビュー]「VERY」7月号

瀬戸内寂聴、坂東眞理子、海老蔵の母――「VERY」20周年記年号に集結した先輩の共通点

2015/06/28 16:00

 『女性の品格 装いから生き方まで』(PHP出版)の著者・坂東眞理子さんは「昔はトロフィーワイフという言葉があったんですが、イケダンって言ってみればトロフィー旦那よね?」「でも稼ぎのいい旦那は家事も育児も分担できるほど暇ではないはず。すごく矛盾を抱えた旦那像。であってもVERYの読者はその数少ないパートナーをゲットした勝利者」と、「VERY」が最強の勝ち組女性を読者として想定していること、そしてイケダンに潜む問題を指摘します。

 また、非常に刺激的だったのは、ミッツ・マングローブさんと小島慶子さんの対談です。ミッツさんは、「(仕事は)男の人の役割だから。女の人は役割いっぱいある。男の人は仕事以外ないでしょ。男の縄張りというか可能性を摘まないでよ」と言い出したかと思えば、その後も「男って主体性がないので、性の対象になる女性に発情しないと頑張らない。自分のために自分のことなんて磨けない。あの女とヤリたいから、結婚したいから頑張って稼ぐ」「女がサボると男のモチベーションが下がって不細工な男だらけになっちゃう」と、男女の役割分業を盲信した「VERY」においては少々時代遅れな発言を続けます。

 そんなミッツさんの発言に、小島さんは「現実的に、もう『男が家族を食わせる』のが容易じゃなくなって、両親が働かなければ子どもの学費が払えない」「『子どものそばにいたい、でも仕事をしないと生きていけない』ってすごく苦しいけど頑張ってる人もいっぱいいるんだよね」と現実をさりげなく教えるのですが、ミッツさんは最後まで「要するに、楽するにはイイ男をつかまえなきゃいけないわけだから、やっぱり女の人は女の人らしくしていないと」と平行線をたどり、小島さんをうろたえさせていました。

 「VERY」はご存じの通り、もはや保守的な女性誌ではなく、日本で最もフェミニズムを意識した女性誌になろうとしています。そんな中、保守的なミッツさんの起用したのは、むしろ読者に「なに古臭い男女論を押し付けているの?」という違和感を芽生えさせるためではないでしょうか。ミッツさんの発言には、いまだフェミニズムの考え方に違和感を持っている読者にすら、「フェミニズムとは何たるか」を正しく認識させる効果もあったように思えます。

■「裕福な専業主婦」時代は終わった

 著名人のさまざまな意見が飛び交うインタビュー企画ですが、人生の先輩たちには共通している点がありました。それは、仕事や趣味など、自分が続けたいと思うものを持っておこうという主張です。

 元TBSアナウンサーの吉川美代子さんは、「ラッコの研究」というライフワークを見つけたそうで、タレントのYOUさんは「30代は忙しかったけれど、育児のせいにして好きな仕事や趣味を中断しなかったのがよかった」、また林真理子さんは「仕事をしている人はどんなことでも仕事は手放しちゃダメ」と語っています。また、市川海老蔵さんの母である堀越希実子さんも、着物の仕事をしていることで「主人がいないのは寂しいけれど、私には私の世界があるし、時間もできた……。これからは自分の時間を大切にしながら、お仕事をがんばっていきたいと思います」と決意表明しています。

 かつて「VERY」は、かつて裕福な専業主婦が読む雑誌でした。しかし20周年記念号の「VERY」を読むと、そんな時代はとうに過ぎたことがわかります。何が起こるかわからないこの時代に、もはや旦那におんぶにだっこでは生き抜けない、旦那に依存しているだけの主婦ではアイデンティティは確保できないという現実を読者に突きつける内容でした。
(芹沢芳子)

最終更新:2015/07/28 21:37
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