「婦人公論」“夫とはやっていけない”特集は、行間にこそ真実が宿っている……
「宇野千代×瀬戸内寂聴」、「よしもとばなな×山田詠美」……女性作家対談に時代ごとの“女の欲望”を投影させてきた「婦人公論」(中央公論新社)ですが、今回は「スペシャル対談 文学に恋して」と題し、「瀬戸内寂聴×山田詠美」対談が実現。その名も「薫風に心も躍る、6年振りの再会」です。2度の圧迫骨折で昨年夏から療養を続けていた瀬戸内が、今では自分で歩けるまでに回復したそう。まさに蘇る寂聴。
対談の前編(次号に後編)かつ久々の再会ということもあり、文学についての話というより、寂聴のご長寿ギャグを山田が褒めつつ受け流し、旧交を温め合う風情の2人。例えば、
寂聴「(退院して)寂庵に戻って風呂場の鏡に映った自分の身体を見た時は驚愕しました。本当に92歳の老婆になっていた」
山田「それまでは?(笑)」
寂聴「92歳の誕生日までは出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいたのよ」
さらに「こんなことなら、92歳の誕生日にアラーキー(編註:荒木経惟のこと)にヌードを撮ってもらっておくんだった」なんて話も飛び出す始末です。消えることない“女であることへの渇望”を、年齢と僧侶という二重の特殊効果で、なんとなくありがた~いもののように感じさせる“寂聴マジック”。なによりまだ現役の書き手であるという余裕ですよ。完全横綱相撲を見せる寂聴山に、山田富士はどう応戦するのか、後編が楽しみです。
<トピックス>
◎瀬戸内寂聴×山田詠美 薫風に心も躍る、6年振りの再会
◎特集「もう夫とはやっていけない!」と思ったら
◎夫・栗田貫一は、「暴君」ではありません
■テレビとネットが作り上げた「暴君」?
さて今号の特集は「婦人公論」お得意の「『もう夫とはやっていけない!』と思ったら」です。今回もリードが名文で、「家事に子育て、親の介護まで何もかも人任せなのに、感謝を伝えるどころかことあるごとに妻を無能よばわりする夫。心ない言葉で傷つけておいて、まったく自覚のない横柄な態度に我慢も限界!」。あぁ惚れ惚れします~。
読者60人を対象にしたアンケートでも「夫に対して『もうこの人と結婚生活を続けるのはムリ!』と、心底思ったことはありますか?」という質問に対し、なんと91.2%の読者が「yes」と回答。「セール品を買ってやりくりをしている話をしたら、『しみったれた話ばかりして、誰の金で養われているんだ。外で働いてナンボだぞ、人間は! やってみろ! できないくせにこのバカ女!』と暴言」(54歳・主婦)。セール話からこの展開……地獄か。そりゃ「今はただ、早くあの世へ……と願うばかり」(55歳・公務員)となりますわ。