保田圭、「結婚=勝ち組」を猛アピールも……安倍なつみへのくすぶるライバル心の正体
居場所のない少女が、自分の道を見つけるのは“いい話”であるはずだ。しかし、それがそう感じられないのは、保田のセンターへの執着があまりにも強いからである。いじられキャラが定着し、「これでセンターに」と意気込むが、やはりアイドルの王道は「かわいい子」であり、センターになることはできなかった。しかし、保田はそれを認めない。「キレイだから、アイドルではない。その人のおかげで誰かが笑顔になれば、アイドルである」「結婚で誰かの一番(センター)になれた」という保田の言葉からは、自分はアイドルとして役割を果たしている、そして、センターの安倍なつみが果たしていない結婚も達成したと暗に「勝利宣言」しているようにも感じる。
「ライバル意識が強いんです」という発言は、保田が加入当時のモー娘。メンバーについて述べたものである。誰もがソロボーカリスト志望だったモー娘。メンバーにとって、グループ活動は不本意だったため、ライバル意識が強かったというが、メンバーに誰よりも強いライバル意識を持っていたのは、保田ではないだろうか。番組の終盤、保田は「一番目立っていたのは、安倍なつみと後藤真希ですが、今、教壇に立っている(番組に出ている)のは保田圭です」と発言したが、モー娘。を卒業した今も、勝ち負けにこだわっていることがうかがえる。
恋愛において、フッた方よりフラれた方が相手に未練を持ちやすいのと同じように、人にライバル意識を抱くのは、勝っている側ではなく、負けている側である。世間には、いまだ「結婚して子どもがいる女性の方が、独身女性より“上”」という価値観が根強く存在し、保田もそう感じている節があるが、その点でいえば、保田は安倍に勝ったと思っているのだろう。しかし安倍は『バナナマンの決断は金曜日』で、結婚について「願望はあるが、今は目の前にある仕事に集中したい」「もし結婚が羨ましかったら、すればいいことだけのこと」と焦りはまったくないと語っていた。
“勝者”の保田より、“敗者”の安倍の方が余裕を持っているように感じられるのはなぜだろう。勝負では勝っても、保田の思考回路が「負けていたモー娘。時代」とまったく同じだからではないだろうか。“勝つ”ことの最大のメリットは、勝負云々より、「やればできる」と自分を信じられるようになることだが、保田はモー娘。時代の“負ける”ことによって身につけた負け癖から抜けきれていない。どうせ自分なんかダメだという卑下と、でも絶対に負けるもんかという自己愛が絡み合い、結果、自分の思う結婚という“勝ち”を手に入れても、なんだか余裕がなく、自信が持てないというスパイラルに陥っているように見える。
勝つこと、負けることは、ときの運もあるし、人生は長いのでいくらでも挽回は可能だが、一度ついた負け癖はそう簡単に消えることはない。勝ったと思っているはずなのに、どこかビクビク、ガツガツしている保田を見ると、胸に複雑なものが去来する。
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。
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