「自分がどう見えるか」彼と街の視線を気にする「美人百花」の重すぎるファッション観
■着回し企画連発の理由
では「美人百花」が時代に逆行して力を入れる、着回し企画を見ていきましょう。
まず、美香さんの着回しページ「賢くおしゃれな1カ月着回しダイアリー」に出てくるのは、「美容好きが高じて、一年前コスメ会社に入社」のOLです。彼女は「本日3本目の打ち合わせへ移動。まずい~時間ギリギリだからタクシー乗っちゃう」というドジキャラです。
「お仕事も恋もMIIAを着ればうまくいく♪」では、「総合商社四井物産の新金属部営業室勤務の29歳」が主人公。彼女は商社で働く彼氏がいるのですが、社内では付き合いを内緒にしているため、彼氏がほかの同僚に獲られるのではないかとヤキモキしています。
「“初々しく、でも大人な”転職着回しカレンダー」では、アパレル企業のPR職から、「もっと幅広い商品宣伝に関わりたい!」と今春大手広告代理店にキャリアアップ転職したOLが主人公。転職したばかりなので、失敗は禁物。なので、遅刻しそうになって慌てたりすることはなく、30分前出勤、10分前到着を徹底していました。
まだまだあります。「化粧品メーカー勤務まおみの“毎日がハッピー♪”な着回し20通り!」では、化粧品メーカー勤務7年目の29歳のリア充OLが登場。市場調査と銘打った買い物、女子会、遅刻しかけて慌てるという定番はしっかり盛り込まれていました。
このように、「美人百花」1冊の中に、キャラ設定のある着回し企画が何本もあるというおかしな状態になっているのです。
それにしても、普通に洋服を紹介するページが少ないのはなぜなのか。それはほかの雑誌のように「流行を追いたい」「ファッションが好き」という読者のためではなく、「美人百花」が「洋服を着ることによって、綺麗な人だと見られたい」「『おっ、可愛いな』と思われる服を着たい」という読者のために作られているからなのではないでしょうか。結構、“頭の中はお花畑”な読者が多そうです。リアルな恋愛指南など、読者が凹むような記事はないのもうなずけます。
そのせいか、自己肯定力が高いのも「美人百花」の特徴。きっと読者の彼氏や旦那さんも、彼女に辛辣な現実を突きつけないタイプの男性なのではと深読みしてしまいます。彼らの肩書や見た目は見えませんが、彼女をさりげなく持ち上げてくれる男性かもしれません。今後「美人百花」読者の男性観に関する企画に期待したいところです。
(柴朋美)