セレブママばかりが登場する、「VERY」の「みんな違って、みんなイイ」特集の怪
ほかのページに出てくる人たちも、成城の子供を幼稚園に通わせるママ、広尾の2人目を妊娠しているママ、大森の育休中ママ、神戸のブランドディレクターママ、名古屋の歯科医ママと、まあ違っているといえば違っているけれど、同じ階層であろう人たちばかりなのです。
しかし、そんなツッコミは「VERY」には必要ないのかもしれません。この特集を見てわかるのは、「VERY」を読むような人や、作っている人は、表向きでも、ファッションとしてでもいいから、「多様性」について言及しておきたい、その方がかっこいいと考えているということ。そういった時代の流れをいち早くキャッチし、ほかの女性ファッション誌よりも先にできるのが、「VERY」の強みだと思いました。
■イケダンの見る影なし!
「VERY」の本当の多様性はむしろ、後半のページに色濃く表れています。幸せな主婦像を謳う「VERY」ですが、今月号には、「離婚届もらいに行ったことありますか?」という特集が。10年前、アンケートで同じ質問をしたときは「ノーコメント」と答えていた読者の変化が紹介されています。
離婚届をもらいにいった読者の夫エピソードは、かなり壮絶です。「休日に起きてきたと思ったら、子どもを怒鳴る夫に我慢ができず家出。しかし、一カ月の間、一切連絡をしてこない夫」「子育てで疲れているのに、毎朝8時には起きて水回りの掃除を始める夫」「多忙からくるストレスで暴言を吐く、セックスレス中の夫」「里帰り出産中に浮気をした夫」「インフルエンザをうつしておきながら、自分と子ども2人を置いて仕事にいってしまう夫」などのエピソードが登場するのですが、恐ろしいことに、そんなひどい仕打ちを受けながらも、どの人も「子どもに幸せでいてほしいから」と言って離婚を留まるのです。
しかも、みんながみんな、離婚届は取りにいったけれど、「出さなくてよかった」「今は幸せ」というエピソードばかり。夫たちは皆、本当に改心したのだろうかと、心配になってしまいました。
今月号の第一特集は「VERY世代は、みんな違って、みんな、イイね!」。もちろん、そのテーマが雑誌全体に貫かれているとは思ってはいませんが、離婚して、妻であることを捨てられない人ばかりが出てくるのは不思議に感じました。「VERY」の言う「みんな違って、みんな、イイね!」とは一体何なのだろうかと、ちょっとモヤモヤが残る今月号でした。
(芹沢芳子)