「バカに子育てできない」夫の言葉に傷ついた元モデル妻、一度きりの婚外セックスがもたらした地獄
その時「そんな食べ方してたら、みっともないよ」と声を掛けたのが、由香里さんの婚外恋愛相手。会社を立ち上げたばかりの独身男性、偶然にも由香里さんと同い年だった。
「彼は最初、退屈そうにしている私の相手をしてくれました。今思い返すと、仕事とは何の関係もない私と話すことで、彼もリラックスできたんでしょうね……初対面なのに、何だか学生時代の同級生みたいに話が合って。当時の私には、異性といえば主人だけでしたから」
昔のモデル時代に培った遊び心が再び芽生え、ご主人を置いてパーティ会場を出た。
「何だか、ワクワクしちゃったんです。ドレスとタキシードでタクシーに乗り込んでホテル街まで行って。その間の道のりでお互いの自己紹介をしました。『人妻なの!?』ってびっくりしてましたけど……まあいいやって」
たった一度の火遊び。けれど彼の愛撫はとても心地よく、由香里さんの肌に温もりを与えていった。
「この人は私の何も知らない、私も、この人から何も欲しがらない……その関係がたまらなく心地よかった。どうしてこんな人生を歩んでしまったんだろうと愕然としました」
ご主人の手のひらで転がされる日々。それは、実は、由香里さんにとって見えない檻の中に閉じ込められる日々だったのだ。人生初めての浮気はいとも簡単にご主人にバレてしまった。パーティの翌日、由香里さんは携帯電話を取り上げられ、1冊のノートを手渡された。
「ノートには1週間の予定をつけて主人に提出するんです。そして、私はその通りに動く。それらの場所には全て車移動です。ナビの履歴を主人が逐一確認しますから……今年に入ってようやく携帯を持つことが許されましたが、GPS機能が付いています」
由香里さんの行動は、全てご主人が把握していることになる。筆者は思わず「この生活を、ずっと続けるつもりですか?」と聞いた。
「だから、私……半年前の自分に言いたいですよ。やっぱり私は、主人の言うように『バカ』なんだ。もっとうまくやればよかったと。彼とは一度の過ちで終わってしまったけれど、バレなければ何よりも心の支えになってもらえた。檻の中で何食わぬ顔して貞淑な妻を演じて、彼と付き合いながら虎視眈々と主人が死ぬのを待つことだってできた……もっと、彼といろいろ話したかったのに」
伏せたまつげに涙を浮かべて由香里さんは呟いた。たった一度の婚外恋愛、セックス。けれど、ご主人の檻の中に完全に閉じ込められた由香里さんは、これから先どう生きるのだろうかと思ってしまう。婚外恋愛の地獄を見たように感じた。
(文・イラスト/いしいのりえ)