カルチャー
娘と年老いた親の関係を考える
独身、一人暮らしの娘と老いた親との距離感を描く3作――“正解”のないそれぞれの選択
2015/04/26 21:00
■旅行に東京案内……親孝行に励む娘
さて、この2冊で重くなった気持ちが晴れるようなコミックが、『親孝行できるかな?』(メディアファクトリー)だ。著者・たかぎなおこさんも独身で一人暮らし。両親はアラウンド70、老いが気になる年頃だ。たかぎさんは、上京した父親を楽しませたり、両親を韓国旅行や伊勢旅行に連れ出したりする。親孝行がてんこ盛りだ。たかぎさんの幼少期に、自分の幼い頃を重ね合わせて、たかぎさんと一緒に親孝行しているような気持ちになれる。同時にちょっと切なくもある。ときには、「子どもの苦労も知らないで」と思うシーンもあるが、どこの親も似たようなものだと苦笑しつつ共感できる。「こんな親子関係なら苦労はしないよ」という、たけしまさんの声が聞こえてきそうだ。たけしまさんの介護が“けもの道”だとしたら、たかぎさんの親孝行は“王道”だ。
たかぎさん家は、どこまでも平穏だ。ずっとこのままでいてほしいけれど、絶対にそれはない。今でも、会うたびに親が小さくなっていることにたかぎさんは気づいている。いずれ親はもっと年を取る。そんなぼんやりした不安はあるものの、距離感なんて考える必要のない肩の力の抜けた親子関係が心地いい。つい何回も読み返してしまった。親子関係に悩んでいる人も、そうでない人も、温泉に浸かったような気持ちになれるコミック。心のコリがほぐれる。
最終更新:2015/04/26 21:14