「結婚しなければまともじゃない」男にとっての結婚の意味=“普通”の延命【男性学編】
4回シリーズで「男性と結婚」について考える当連載。初回となる前回は、結婚相談所に登録する男女の認識のズレと、理想を追いがちな男性の傾向について触れた。2回目となる今回は、武蔵大学で「男性学」の教鞭をとる田中俊之氏に、男性にとっての「結婚」の意味について話をうかがった。
■「職を転々とする」男は凶悪犯罪者?
――「男性学」はどういったものなのでしょうか?
田中俊之氏(以下、田中)70~80年代後半からウーマンリブやフェミニズムなどの言葉が出てきました。そういった女性学のカウンター的存在として80年代後半から90年代にかけて出てきたのが男性学です。女性が女性ゆえに抱えている問題について男性も考えなくてはいけないし、そもそも男性が男性ゆえに抱えている問題も考えていこう、というのが男性学です。
――男性の抱える問題については、昨今関心が高まっているように思います。田中さんご自身が肌感覚でそれを感じたのはいつ頃からですか?
田中 世間一般的にはここ1~2年ですね。私はずっと市民講座で男性学の講座を開いてきたのですが、この間、子持ちの30代男性で非常に熱心な方がいて、子育てをもっとしたいけど仕事が忙しくて、と相談されたんです。この悩みは今のお父さんのものだなと。「働いていればいい」という状況ではなくなってきているんです。
そもそもこういった講座は自治体の「男女平等センター」などで開催されますが、こういったところに男性が足を運ばなかった。最近になって、男性自身がこのままじゃいけない、と気づきだしたのかなと思います。メディアでの注目はここ1~2年ですが、市民講座で人が集まりはじめたのは4~5年位前からです。
――現場ではすでに強いニーズがあったんですね。男性の困難、問題は増えているのでしょうか?
田中 いつと比較するのか、に尽きるのではないかと思います。私は今年で40歳ですが、30~40歳くらいの人が自分の結婚観と比較するのは親世代の結婚観ではないでしょうか。そことの比較でしか実感がないですよね。親世代の比較で決定的に違うのは経済の状況です。40年前、20年前と比べても男性の正社員の年収は低下しています。しかし一方、日本男性の労働率(働いている人の割合)は90%台後半と、世界でもトップクラスのままです。年収は下がっているが、働くのをやめていない。裏返すと、働いていない男性に対する否定的な目線が強い。市民講座でもよくする質問なんですが、テレビを見ていて、男性の犯罪者が無職だと、やっぱりって思いませんか?