サイゾーウーマンカルチャーインタビュー原宿ストリートファッションの今を語る カルチャー 青木正一氏×渡辺明日香氏の“原宿”対談【前編】 「服なんてそんなにいらない」若者たち、原宿ストリートファッションは本当に衰退したのか? 2015/04/21 16:30 女子カルチャーインタビュー ――その傾向は原宿の若者だけに限らず、若者全体に見られるのでしょうか? 渡辺 普段教えている学生たちの服の買い方を見ていると、「流行しそうなものを先駆けて買いたいけれど、それは本当にはやるかどうかリスクを負うことにもなる」「とはいえ、すでに大流行してしまってから買うとみんなとかぶるので、結局スルーする」と考えることも多いようです。本当は買いたくても、ネットで調べて「あれは終わってる」という人がいれば、買わない。若いからこそいろんなファッションができるはずなのに、ハズしちゃうと「イタい」と言われるから、イヤだという人が増えています。 青木 ネットの影響は、別の側面にも表れています。かつては若い子の友達関係の重要な要素として、ファッションがありました。それが今は、SNSの方が重要になったんです。SNSなら無料で自己表現ができる。仲間同士の認識のアイテムとして、ファッションの重要性が低くなり、ファッションが特別なものでなくワンオブゼムになっています。 渡辺 そうですね。かつてはギャル系の子たちはギャル仲間同士、かたやモード系、カジュアル系と、その人の関心と着ている服がリンクしてわかりやすかったんです。ところが今は、ギャル系とナチュラル系の子の仲がいいことも珍しくなく、「一緒にディズニーランドに行った」などと、ファッション以外の別の接点を持っているようです。すなわち、服=パーソナリティではなくなっているわけですね。そのせいか、「今日は渋谷に行くのでギャルっぽく」「明日は新宿に行くのでルミネのブランドっぽく」と、よくいえば柔軟性も高くなっている。経済的な理由とどこまでリンクしているのか定かではありませんが、08年にサブプライムローン問題が発生し、全体的に消費が落ち込む一方で、2000年代にファストファッションが流入したことで、おしゃれの参入障壁が低くなり、みんな“それなりのもの”を着られるし、それでいいのではないかという風潮になってきたことも一因としてあります。 青木 いろんなものが安くなったりタダ同然になったりしていると、お金をかけて高い服を買って、流行のものだと1年しか着られないとかって、意味がわからないでしょうね(笑)。そういった「適度におしゃれしたい」という人たちが、ファストファッションによってお金をかけずに全体的に底上げされたことは事実ですが、1月にTOPSHOPが閉店したようにファストファッションも停滞してきています。安い服が増えすぎて「服なんてそんなにいらないよね」と人々が気付いたのかもしれません。ファストファッションだけでなく、DKNYやベネトンなど大資本の店も閉店や撤退し、ボリューム層に服を提供している大手アパレルも低迷。ファッションは、これまで経験したことがない領域にいくかもしれません。 ――お手軽に流行のアイテムを得られるファストファッションが衰退すると、さらに若者のファッション感度も低下してしまいそうですが……。 渡辺 ただ、青木さんが冒頭でおっしゃったように、ファッションにはいい時期、悪い時期と波があるので、今おとなしいのは次の波の準備のようにも思います。特に震災以降、若者のファッションはすごくおとなしくなりましたが、そこから立ち直るかのように、今は何かが始まりそうな予感がします。 青木 みんながおとなしくなると、本当におしゃれな子が逆に目立つ状況ができるとも言えますしね。先端にいる感度のいい子たちは、世代交代で入れ替わったとしても、常に一定の割合いるので、そのあたりは心配していません。 (後編につづく) 前のページ12 最終更新:2015/04/21 16:30 Amazon 『ストリートファッション論』 あたちも昔は、いっちょうらで原宿GAP前にたむろしてたわ~ 関連記事 化粧も加工も同じ――「NYLON JAPAN」編集長が語る、自撮り女子の自意識と“かわいい”の見せ方「渋谷を再びカルチャーの中心に」1980年代から現在へ、“渋谷文化”はもう生まれない?女子カルチャーの新局面? ギャル系・カワイイ系でもない1990Xとは今なお愛される雑誌「オリーブ」が志向した、“かわいい”と“少女性”の強さ「小悪魔ageha」復刊! ナチュラル化するage嬢に一石を投じる“盛り”復権がテーマ 次の記事 国仲涼子妊娠報道の熾烈な舞台裏 >