カルチャー
青木正一氏×渡辺明日香氏の“原宿”対談【前編】

「服なんてそんなにいらない」若者たち、原宿ストリートファッションは本当に衰退したのか?

2015/04/21 16:30
「STREET」「FRUiTS」編集長・青木正一氏(右)と
共立女子短期大学准教授・渡辺明日香氏(左)

 原宿は若者の街。そのイメージが浸透するようになったのは、1960年代にさかのぼる。当時、外国文化にあこがれる若者たちが集い「原宿族」と呼ばれるようになったことに端を発する。78年、ファッションビル「ラフォーレ原宿」が開業。表参道の歩行者天国(ホコ天)には、個性的なファッションに身を包む若者が集結するようになり、93年になると、原宿系ファッションを紹介する月刊女性誌として「Zipper」(祥伝社)が創刊。しかし、その「Zipper」は、2014年12月号より季刊化され、いつしか「原宿のストリートファッションが下火になった」という声が聞こえるようになった。また、原宿に限らず「若者の服がつまらなくなった」「自己表現=ファッションという感覚がなくなった」という意見も散見される。果たして、本当に原宿のストリートファッションはつまらなくなったのか? ストリートファッションをスナップ形式で紹介する雑誌「STREET」や「FRUiTS」(ともにストリート編集室)の編集長である青木正一氏と、街ごとの若者のファッションを定点観測し続けてきた共立女子短期大学准教授の渡辺明日香氏に、原宿ファッションの過去、現在、未来を語ってもらった。

――“原宿系”を牽引してきた月刊誌「Zipper」の季刊化を象徴として、「原宿のストリートファッションの勢いがなくなっている」という説がありますが、お2人の実感をお聞かせください。

青木正一氏(以下、青木) 「Zipper」の季刊化に関しては、原宿のストリートファッションがどうというよりも、雑誌とアパレルの状況が悪くなっているということが大きいんじゃないですかね。確かに原宿ファッション自体は、今はよくない時期ではありますが、これまでもよくなったり悪くなったりと波がありますので。僕は、原宿の若者たちのファッションがどれだけクリエイティブか、頑張っているかということに興味があるのですが、全体的にそのモチベーションは低くなっているかもしれません。原宿に何年もいる20~30代のベテランは相変わらずおしゃれですが、もっと若い層の高校生、専門学校生あたりが守りに入ってしまって、面白くなくなっていますね。

渡辺明日香氏(以下、渡辺) 私は、1994年から原宿、渋谷、銀座、2000年から代官山でも若い人全般のファッションを撮影して毎月定点観測をしていますが、90年代後半の原宿は、裏原系、デコラ、ゴスロリ、パンクなどのファッションで自己表現する人を街でよく見かけました。そこまでファッションに関心のない人も「あそこまでやっていいんだ」と気持ちを高めたり、新しい装いにチャレンジする楽しさを分かち合っている感じがありました。ところが、インターネットの普及により、自分のファッションを批判する人におびえる人が増えたようにも思います。ちょっと冒険すると、以前は街の中でダイレクトに「あの人すごい」という視線を送られていただけですが、今はネット上で「かっこいい」と褒めてくれる人がいる一方で、思わぬところでバカにされ、自尊心が傷つくこともある。そのために、冒険をあきらめるようになったんです。

青木 ネットのそういった面をプラスにしていったのが、10年頃に登場したきゃりー(ぱみゅぱみゅ)ちゃんですが、11年の東日本大震災以降は男女とも全体的にはあまり目立ちたくないという人が多く、冒険しない人が多い。色使いも黒や紺が主流ですよね。

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