コラム
仁科友里の「女のためのテレビ深読み週報」

北斗晶を“ガン無視”する辻仁成に感じた、ナルシストを愛してしまう女のナルシズム

2015/04/02 21:00

 才能が認められているものの、相手を無視する。この行動パターンで思い出すのは、“天才脚本家”といわれる三谷幸喜である。

 例えばこんなエピソードがある。前妻である女優の小林聡美は、結婚生活の途中で、食事を作ることをやめたそうだ。なぜなら、執筆の最中に食事をすることを三谷が嫌がり、作っても無駄になるから。ほかにも結婚記念日の旅行もドタキャン、家に義父を入れることも嫌がったそうだ。仕事柄、規則的に生活することは難しいだろうが、無視はある意味、言い争いよりしんどい。

 小林は、こういう自分中心の夫が合わなかったようだが、面白いことに、この世にはこういうタイプの男が好きという女性も存在する。いわゆる「才能に惚れる」タイプの女性である。

 例えば、辻仁成の最初の妻、女優の南果歩。辻は90年代後半に文壇デビューを果たし、その後に監督業に進出していく。ちょうどその頃、南と結婚したが、南は「婚約指輪はいらないから、そのお金で1メートルでも多くフィルムを買って」と夫の才能に賭けると宣言。辻が芥川賞の候補となった時には、願掛けとして「大好きなコーヒー断ち」をした。が、多くフィルムを買わせて映画を撮らせた結果、辻は女遊びをはじめ、主演女優と不倫騒ぎを起こして、離婚することになる。その女優こそ、三谷幸喜の現在の妻である。

 捨てられた形となった南だが、その後、日本が誇る国際的俳優・渡辺謙と再婚。才能に惚れる趣味は変わっていないようである。辻と息子を捨てた中山の新恋人は、パリを中心に活躍する
電子音楽アーティストで、またもや才能のある人だが、インスタグラムに投稿された画像(中山美穂の後ろから抱きしめて、髪に口づけしている)から判断するに、ナルシストの匂いがぷんぷんする。

 「才能がある(けれど、ナルシストな)男」を求めて、女たちがパートナーチェンジをする姿は、オクラホマミキサーに似ている。この関係、一見、女の方が我慢を強いられているようだが、実は彼女たちには、「こんな面倒くさい男を理解して支えられるのは私だけ」「彼の活躍は私のおかげ」というナルシシズムが潜んでおり、ナルシスト度合いで言うのならば、才能がある男より、それを求める女の方が強烈なナルシストなのである。

 辻と中山が離婚を発表した時、マスコミは「理由」を探したが、離婚に理由も善悪もない。ナルシスト男がナルシスト女と結婚したが、ナルシスト女が別のナルシスト男に恋をして逃げられた。それは、ナルシスト男にとっては許せない行為だが、かつて自分がしたことでもある。喧嘩両成敗という言葉があるが、離婚もまた「お互い様」というやつではないだろうか。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。
ブログ「もさ子の女たるもの

最終更新:2015/04/02 21:00
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