元カレと年に一度だけのセックス――障がいを持つ子の母が語る、活力剤としての“婚外恋愛”
当時の思い出話をしているうちに別れがたくなり、ラブホテルへ入った。
「懐かしかったです、うれしかったんです……。付き合っていたときはキス止まりで、セックスまで至りませんでしたから。ああ、この人のこと、すごくすごく好きだったんだなあって実感した瞬間でした」
連絡先を交換した2人だけれど、その後、頻繁に会うことはなかった。次に彼から連絡が来たのが、秀美さんの誕生日だったのだ。秀美さんは、「驚きましたよ、本当に! びっくりして……涙が出ました」と振り返る。
再会のメールから再び体を交わすことになり、いつしか年に一度の再会が当たり前となった。彼も既婚者、子どもが2人いる。
「きっと私のように、何かを悩んでいるんだと思います。でも、何も訊きません。私も、特に彼には家庭の事情を話してはいません……年に一度2人で会うことで、お互いの人生を頑張れる。あとは何も訊かない。それがルールですから」
秀美さん夫妻はというと、「年に片手で足りるくらい」の営みしかないというが、話を聞いている限り、家庭は非常に円満だ。お子さんを中心に、ご主人も秀美さんも、日々を力強く生きている。
「でも、私知ってるんですよ。主人には浮気相手がいるんです……。多分、スナックで知り合ったお気に入りの女の子だと思うんですけど」
思わず驚いて質問した。ご主人には、そのことを言及しないんですか、と。
「しませんよ! 主人はその子がいることで、つかの間の安らぎを得ているんだと思うんです。私にとっての彼の存在と同じように……息抜きしないと、この生活、疲れちゃいますから。そうですね、私にとって彼の存在は、『何よりも効果的な活力剤』です。たった年に一度だけでも、彼に抱かれることで、学生時代に彼と恋愛していたときの無邪気な私に戻れるから」
綺麗事だけでは生きていけない。死ぬまで精一杯生きるためには、婚外恋愛という息抜きが必要ということか。秀美さんの何気ない言葉が、筆者の胸に重くのしかかった。
(文・イラスト/いしいのりえ)