「カワイイの原風景はサンリオ」女子のノスタルジーをくすぐる魅力の秘密
少女時代を振り返ると、そこにはいつもサンリオキャラクターがいた―—。「けろけろけろっぴ」の缶ペンケース、「ぽこぽん日記」のレターセット、「みんなのたあ坊」のポストカード。そんな懐かしのサンリオキャラクターやグッズなどをまとめた書籍『サンリオデイズ』『サンリオデイズ いちご新聞篇』(BNN新社)が、発刊から数年がたった現在でもいまだ女性たちに人気だという。折しも今年は、「リトルツインスターズ(キキララ)」と「マイメロディ」の誕生40周年(ハローキティは昨年)。この『サンリオデイズ』をテーマにした展覧会「サンリオデイズ フィーチャリング マイメロディ」も、3月25日(水)から東京・西武渋谷で開催される。サンリオの何が、女たちをうずかせるのか? その後の女子カルチャーにどんな影響を与えたのか? 同書の著者であり編集者でもある竹村真奈さんに会いに行った。
――書籍がヒットしています。まずは竹村さんが『サンリオデイズ』を制作した経緯を教えていただけますか?
竹村真奈氏(以下、竹村) 最初のきっかけは、かつて私が編集長をしていたカルチャー誌「Girlie」(アスペクト)で、2004年にマイメロディを表紙にしたことでした。ひと足先に発売されていた某カルチャー誌のキャラクター特集の表紙が泣き顔のミッフィーだったんですけど、私はそれを見て「日本人なら絶対マイメロでしょ!」と奮起(笑)。鼻息荒くサンリオさんに打診したら、運良く特集を組ませてもらえることになったんです。サンリオ本社にお邪魔して、泣き顔のミッフィーに対抗したい一心で、必死に泣いているマイメロの図版を探しました。世の中にはディズニーなどのビッグネームがいくつもありますが、私は日本のサンリオだって全然負けていないと思っています。キティやマイメロなど、ミッキー同様、世界の第一線で愛されているキャラの後ろには、ものすごい数のキャラたちが控えているのだから。これは、もう日本の誇りですよ!
――竹村さんご自身もサンリオ育ちなんですか?
竹村 はい、ガッツリ(笑)。小学生だった80年代はサンリオ全盛期で、サンリオショップや近所のファンシーショップに通っては、お小遣いでちょっとずつちょっとずつグッズを買い集める日々でした。当時、ハマってない女子小学生なんていなかったですよね? 熱狂とまではいかなくても、みんな普通にゴロピカドンのシールとか、ハンギョドンのノートとか持っていました。私が特にハマっていたのは、ザ ボードビル デュオと、ザシキブタ。子どもだてらにピンク系がなんとなく苦手で、「(当時)キティやキキララを持ってる子はガキンチョだ!」「落ち着いたトーンの、大人っぽいキャラの方がイケてる!」なんて思ってた(笑)。今は、キキララもキティちゃんも大好きですけどね。女の子の種類によって、不思議とキティ・キキララ・マイメロ派か、その他派に割れたものです。それくらい強いキャラクターなんですよね。
『サンリオデイズ いちご新聞篇』(BNN新社)より(C)2013 SANRIO CO., LTD, JAPAN
――サンリオは海外でも大人気ですね。
竹村 特にキティ人気はすごいですよね。90年代後半にデザイナーが山口裕子さんに替わり、ファッショナブル路線になってからは人気が爆発。キティの可能性はますます大きく広がっていきました。しばらくすると、当時絶好調だった朋ちゃん(華原朋美)をはじめ、ギャルやハリウッドセレブまでが“キティラー”に。そうして、70年代から活躍するキティが時代にのまれず第一線を走り続ける様子は圧巻ですよ。でも、私が求めるサンリオの魅力は「どこか懐かしい、ノスタルジー感」。だからこそ、『サンリオデイズ』を編集する際は、90年以降のキャラは断固として載せないと、こだわったんです。もちろん近年のサンリオキャラクターもカワイイですけど、80年代と比較するとデザインの方向性が急にぐっと今っぽくなるんですよね。そこは絶対に混在させたくなかった。
――書籍の帯には、「サンリオに夢中だった少女たちに捧げます。」と書かれていますね。やはり読者は80年代に小学生だった、30代女性が中心ですか?
竹村 そうですね。お母さんになり、サンリオグッズを子どもに買い与えるうちに、かつてのサンリオ愛を思い出す方も多いです。かつて少女時代にサンリオキャラを見てときめいた“カワイイの原風景”は、絶対に揺るがないものだから。私は普段の格好はカジュアルな方ですけど、例えばパステルカラーやさりげないラメが入っている女の子らしいものを見ると、テンションが上がるんですよ。「なんだろう、この感覚?」と脳内検索したら、あの頃サンリオショップに入ってワクワクした、“私だけ”の思い出に行き当たった。これって女の子だけの特権だし、きっとおばあちゃんになっても変わらない、サンリオが教えてくれたカワイイの基準なんですよね。忘れ去っていたあの頃の自分と再会し、思わず本を手に取ってくださる方が多いのではないでしょうか。
(後編につづく)