椿鬼奴と森三中・黒沢かずこに見る、女友達の恋愛を心配するときの大切なルール
既婚女性と独身女性のすれ違いは、多くの人が経験しているだろう。よくあるパターンが、何となく話が通じなくなり、遠慮が必要になることである。既婚女性は、結婚をしたことで「良かったこと」と「悪いこと」をそれぞれ経験し、その良し悪しの配分は人によって違うが、女同士の暗黙の了解で、「良かったこと」はあまり話されない。独身女性に対して、「結婚はいい」と熱弁を振るった場合、自慢話や上から目線に受け止められ、友情が終わりを迎えることも考えられるからだ。
鬼奴が仮に佐藤と結婚して、経済的な悩みを吐露したら、もともと佐藤に好感を持っていない黒沢は「だから、言ったじゃないか」と、悩み相談で絶対禁忌の「悩んでる人そのものを否定する」可能性が出てくるだろう。夫に不満があることは、「夫が嫌い」とか「離婚したい」と必ずしもイコールではない。もし夫に対して否定的な意見を言われたら、今後その女友達との付き合いに支障をきたしかねない。
「一緒」でないと、良い意味での「心配」が成立しない理由はもう1つある。環境が違うと、地雷が格段に増えるのだ。例えば、現段階で、結婚に向いてない彼氏を持つ鬼奴が、彼氏のいない黒沢に「恋愛して幸せになって」と言うのは、どちらも「結婚の可能性が低い」という点が一緒であることから、独身女性同士の友情からくるアドバイスとなるが、環境の違う人から言われると、どんなに言葉を選んでも「見下し」と解釈されることがある。
鬼奴のために涙を流す黒沢を、石橋は「心のきれいな人」と褒めたが、女同士の関係は、そんな単純なものではない。相手をそれだけ「好き」であるということは、同じ分だけ「嫌い」になる可能性を秘めているということでもある。
女の友情は、時に美化され、時に裏切りの象徴として描かれるが、実際は表裏一体だろう。「一緒」だからこそ成立し、「一緒」でなくなれば壊れてしまう。どちらかが裏切ったとか悪いということでなく、学校と同じで卒業がある、ということではないだろうか。
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。
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