「生活には困らないけど、友達がほしい」主婦のお悩みがはらむ、“批評されること”への恐怖
家族関係、恋愛、夫婦関係、仕事、結婚、介護、人生……サイ女読者のお悩みに“プウ美ねえさん”こと熊田プウ助が、いつもそばに置いておきたい“エプロンメモ”とともに回答します。
【今月のお悩み】
「気心の知れた近所のお友達がほしいです」
去年末に引っ越しをして、2カ月たちました。徐々に生活にも慣れてきたんですが、周囲に誰もお友達がいません。周りを見渡しても、子どもの年齢が違う、というか、うちの子は、近所の学校に通っていないので、この地域のお母さん方との接点が皆無なんです。ボランティア活動や清掃活動があれば、出ようとは思うんですがそうそうありませんし、毎晩家の前をお掃除して、出会う人にご挨拶くらいです。普段の生活に特に困ることはないのですが、たまにお茶飲んだり、無駄口を叩いたりする、気心の知れた人が近所にほしいなあ、と思うんですが、どう相手と関係を築いたらいいのか教えてください。(ととりん、43歳)
【プウ美ねえさんからの回答】
ひとに相談をするときは、謙虚な態度をこころがけたいものです。
わたくしには充足した家庭があるの。ボランティアも好きだけど、積極的にかかわる気はないの。とおくのお友達に会うためにわたくしおんみずから出向くのは難儀だから、近場でたのしませてくれる相手が欲しいわ。ねぇ、さしあたって特に必要のない、無駄口というたのしみを努力せず手に入れる方法、知らないかしら? ……と、あなたのおっしゃるのはこういうことです。
劣情にさいなまれて情事をもとめるとか、何日も食べてないとか、電車内で便意に耐えているなどというとき、ひとはやっと本能的な表情をあらわしますが、贅沢品に対しては、がつがつした気概をみせたがりません。しかし、スポーツ観戦だとか、釣りだとか、ブランド収集、びんぼう旅行、ギャンブル、コスプレ、アイドルのおっかけなど、やらなくても生きてゆける純粋な娯楽にすら、がつがつと血道を上げるひとがおりますでしょう? そういう、なんのたしにもならないことにムキになる様子ほど、かえって感心させられたり微笑ましかったりするものです。それは本人だけでなく、まわりのひとをも愉快にします。すきなものの話を一生懸命されて、ついつい、おもしろく引き込まれることがありますでしょう。あれが、がつがつの魅力です。
それにひきかえ、とりすました人はおもしろくありません。はじをかくことや批評されることをおそれ、けっきょく他人をしあわせにするようなグルーヴを生み出さないのです。もちろんそれはわるいことではありません。迷惑をかけない生き方は、重んじられるべきマナーです。ととりんさんはバランスのとれた人柄で、生活をきちんときりもりする節度をもっておられます、それはお言葉からつたわります。ただ、あなたが必要としていないものを、真剣にさがしてくれるひとがいるものか、もういちどかんがえましょう。ととりんさんが友達をほしくてほしくて、毎晩髪をかきむしって泣いて眠れない、ということならば、おねえさんは非常に共感して(ニヤニヤしながら)相談にのれます。
友達とは字のごとく、複数のひとからなる単位です。友達を欲するとき、相手からも評価されることを覚えておきましょう。あなたは「いなくても特に困らない無駄口用員」としてお座敷がかかるほど、おもしろい人ですか? もしそうであれば、自然と、同レベルの友達があつまってくるはずですよ。
【今月のエプロンメモ】
プウ美おねえさんには友達がいません。「友達」という言葉にあこがれが強すぎて、自分が誰かの友達になりうるなど想像できないし、誰かをその定義におしこめたとたん、関係を失うことがおそろしくてたまらなくなるのです。ですから「会うと幸せになる知人」「心から尊敬できる同業者」など、心のなかで独特の肩書きつけて呼んでいます。そうすると、落ち着いて愛することができます。
熊田プウ助(くまだ・ぷうすけ)
1969年生まれ、ゲイ漫画家。都内でひっそりと飼い猫と暮らす日々を描いたエッセイマンガ『本日もおひとりホモ。中年マンガ家生活』(ぶんか社)など、著書多数。最新刊は、作画を担当した『世界一周ホモのたび 祭』(同)。
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