「カニエする」は自虐ギャグじゃなかった! カニエ・ウェストがグラミー賞に苦言
ステージに現れたカニエを見て、誰もが「またビヨンセに受賞させろと言うのか」と思ったように、ビヨンセ本人も「ふぁっ!?」と鼻の穴を膨らませて驚く顔がカメラに捉えられている。口元は、「ノー! カニエ、ノー!」と動いており、次の瞬間には大ごとにならなくてホッと笑顔になっていた。彼女の隣に立っていた夫でカニエの親友であるジェイ・Zは、「マジかよ……」と呆然とした表情を見せるのだが、カニエがすぐにステージを降りたのを見てホッとしたように笑顔になり、ヤジを飛ばして拍手をしていた。
ネット上では、このハプニングを「6年前のスピーチ妨害事件をネタにした自虐ギャグ」だと受け止め、大盛り上がり。スピーチで人の邪魔をすることを、これから「カニエする」と言おうという動きまで巻き起こった。
しかし、これには続きがあった。カニエはやはり本気で、グラミー主催者たちに苦言を呈したかったのである。
授賞式後、カニエはキムを横に立たせてインタビューを受けたのだが、「もしグラミーが本気で本物のアーティストたちを求めているのなら、こういうお遊びはやめてほしいんだよ。もう、うんざりなんだ」と厳しい口調で語りだした。「なに言っちゃってるのかしら」と顔を引きつらせるキムに構わず、カニエは「BECKもさ、芸術性に敬意を払って、賞をビヨンセに譲るべきなんだよ。本当、言葉もないほどがっかりだよ……」とまくしたてた。
興奮気味のカニエの主張は止まらず、「オレたちミュージシャンは、毎日働いている人たちにインスピレーションを与えなきゃならない。で、みんながなにを聞いているのかといえば、ビヨンセのアルバムなんだよ。ビヨンセの曲は、彼らを別世界へと連れてってくれるからさ」「もう、からかわれるのはうんざりだ。オレには妻がいるし、娘がいるし、クロージングラインも経営してるし、つまり、娘を危険な目に遭わせたくはないけどね。創造性のために戦おうと思って、ここに来たんだよ」と述べた。つまり、カニエは今回も、「ビヨンセに最高のグラミー賞を受賞させろ」と言いたかったのであり、なにも言わなかったのは、「愛娘のノース・ウェストに恥をかかせてしまうからグッとこらえた」ということのようである。
カニエの思惑通り、今回の受賞スピーチ妨害は大きな話題となり、今年のグラミー賞で最も印象に残るシーンだったと受け止める人も少なくなかった。米大手掲示板「reddit」では、「カニエ、最高!」「グラミーにはぜひ、毎年ビヨンセをノミネートして受賞させないでもらいたい。そうすれば、カニエのおもしろいリアクションが見られるから」「いっそのこと、カニエが新しいアワードを立ち上げて、ビヨンセに賞をあげたらいいのに」と、カニエに好意的なコメントで埋め尽くされている。
ネット上では、「オレたちのカニエ」として暴走してくれることを願う人が多いようで、良くも悪くも、期待されているカニエ。2015年も、彼の注目度はますますアップし続けていくようである。