仕事のように親の介護にのめり込む夫、退職後は「介護のための単身赴任みたいなもの」
体調を心配していた大学時代の恩師、添え書きはなかったものの、年賀状は届いたので生存は確認できた。そこで正月明け、ご機嫌伺いの電話をしてみた。恩師は認知障害が進んでいるようで、奥様としかお話しできなかったのは残念だったが、迫真に迫る老老介護の実態に思わずメモを取ってしまった。ライターのさがです。先生ごめんなさい。
<登場人物プロフィール>
秋田 佐紀江(58)中部地方在住。子ども2人は独立し、夫婦2人暮らし
秋田 康介(63)佐紀江さんの夫
秋田 丈太郎(92)康介さんの実父
秋田 ふさ(88)康介さんの実母。有料老人ホームで暮らす
■6年間続く、通い介護
秋田さんの介護生活は、もう7年目に入る。隣県で2人暮らしをしていた夫の両親のもとへの“通い介護”だ
「7年前は、義父母も高齢とはいえまだ比較的元気で、介護と威張れるほどのことはしていません。変わったことはないか、月に2~3回様子を見に行く程度でした。そんな中、義母に認知症の兆候が見られるようになりました。義父は自分一人ではお茶も入れない人だったので、義母が家事は全てやっていたのですが、鍋を焦がしてしまったり、同じような物を大量に買ったりするようになったんです」
夫は長男。弟がいるが、海外在住なのでまったくあてにできないという。
「最初の頃は、週末に主人と一緒に通っていたのですが、義母の様子がおかしくなってからは、病院に連れて行ったり、買い物に行って食事を作ったりしないといけないので、平日にも通わないといけなくなりました」
それから秋田さんは、パートが休みの日を利用して義父母の家に通い続けた。次第に義母の認知症は進行し、3年前に有料老人ホームへ入居した。義母を施設に入れることに対して、当初夫は反対していたが、ヘルパーを家に入れることを父親が頑なに拒否し、これ以上頻繁に秋田さんが義父母宅に通うのも不可能だった。
「主人も週末にはなるべく実家に行くようにはしていましたが、平日は仕事が忙しくて動けません。同居は考えませんでした。義父は頑固な人なので、私にはとても同居は無理でしたね。主人も同居しようとは言いませんでした」