なぜ“普通”に恋愛できない? 『まだモテてないだけ。』著者が語る“少女マンガ”の呪縛
――ところではる坊さんは、ラルクアンシエルのhydeにハマるなど、追っかけ気質だそうですが、それが自身の恋愛に影響したということはありますか。
はる坊 私の場合はですけど、追っかけは思いが一方通行なので、相手の気持ちを慮るところが欠けてしまう点はあるかも。あと、結構粘着質でストーカー化しやすいとか(笑)。ストーカーっていっても、たまにSNSで、あの人どうしてるかなーって見るぐらいですけど(笑)。でもそれより「少女マンガ」の方が恋愛に悪影響でしたね。ある日突然相手に惚れられるとか、思い続けていれば相手に伝わるとか、私の読んでいた時代の少女マンガは、恋愛の具体的なプロセスが書かれていなかったんです。それに、少女マンガには「苦労しないと幸せになれない」という前提があり、現実の恋愛でも、常に「いつかライバルが現れるのでは」と不安に襲われていました。「苦労せずに得た幸せは、すぐ崩れる」と思い込み、苦労していないことに罪悪感すら抱いてしまうんです。でも、年を取って、周りのカップルが波瀾万丈もなく、本当にさらっと幸せに結婚していくのを見て、「あ、苦労しなくても幸せになっていいんだ」と気づいて、少女マンガの呪いが解けましたね。私も夫とはトントン拍子に結婚まで行き着きました。
――彼氏を作るために、恋愛本ループや催眠術、スピリチュアル、オーガニックセミナーなどにハマったということですが、これらから得たものはありますか。
はる坊 先ほども言ったように、恋愛本は行動の取っ掛かりや燃料にはなりますが、内容が役に立ったということはありません。「ボディタッチをしてみましょう」「2~3回連絡して、引いてみましょう」とか実践しましたけど、その日本語は理解できても、「なぜそれをするのか?」という本質的なところは、まったくわかっていなかった。催眠術やスピリチュアルスポット巡りなどで得たものも何もないですね(笑)。実際にデートしたり仕事したりする方が役に立ちます(笑)。
――最後に『まだモテてないだけ。』を、どんな人に読んでほしいですか。
はる坊 思い返せば、私は自分に自信がなかったんです。小中時代は、自分が自分を好きなのか嫌いなのかすらも考えなかったんですけど、高校に入って女子同士の人間関係につまずいてしまった経験があり、ほかの人が持っているものを自分は持っていないことにコンプレックスを抱くようになってしまいました。なんでも自分のせいにしてしまうという性格もあって自信がなくなり、また恋愛本や自己啓発本には「あなたは○○ができないからダメなんだ」「ダメな人に好かれるのは、あなたがダメなせい」と書かれているものが結構あったため、漠然とした不安がいつもあったんです。そうなるともう、「彼氏ができたからって、この不安はなくならないのでは?」とも思っていましたね。ただでさえ悩んでるのに、そこに追い打ちをかける……という本にはしたくないと思い、このマンガを描きました。過去の私と同じように、漠然とした不安を抱える人に読んでもらいたいです。
(取材・文/佐川みえい)
カマンベール☆はる坊(かまんべーる・はるぼう)
平日は静岡、土日は東京という生活をしている横浜出身の既婚OL。KADOKAWAメディアファクトリー主催の第24回コミックエッセイプチ大賞にて@たかぎなおこ賞」を受賞。ペンネームの「カマンベール」より生肉が好きだそう。
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