出産前の息子から「地球を守れ」と指令……山田まりやに宿る自然派志向を超えた“なにか”
「あのね、僕は緑と青い海に囲まれたこの地球が大好きで、だからこそ護るために来たんだよ。だから、僕をお腹に宿してから、ママの意識が食べ物やエネルギーのことに向かうのは当たり前のことなんだ」
これは……!! もしや山田まりやのお腹にいたのはC.W.ニコルか!? 「森は生きている」に次ぐナチュラル名言が誕生した瞬間です。「マクロビ」「陰陽」「カーヴィーダンス」「漢方」などの“お花畑”にたどり着いているからか、妊娠出産におけるお花畑度はやや弱め、というかそちらが強烈すぎて目立たないと思いながら読んでいましたが、とてつもない爆弾を隠し持っていましたよ。ということで、お花畑度は★7つ。
マクロビによる厳しい食事制限を母性の力で乗り切り、胎児からのありがたいメッセージに身も心も癒やされながら、ついに出産のときを迎える山田。くだんの“パーティー出産”に関しても、たっぷりページが割かれています。たぶんこの本を読めば「パーティー出産さもありなん」ですが、いくら山田が「私がこの形式を強く希望したのは、出産時に話題を集めたかったとかそんな想いは一切なく、とてもシンプルなものです。“ビビリで痛がりで怖がり”な私と“石橋を叩いて結局渡らない”タイプの旦那さん(笑)だけでは、絶対に心細すぎる!というのが一番大きな理由でした」と言っても、客観的に見れば旬を過ぎた女性タレントが出産に賭けた起死回生の一発芸と取られるのが妥当。
オリジナル出産は百花繚乱、病院の分娩台で産むことが「イケてない」ともされるこのご時世。出産で自己実現を果たしたいという気持ちは、誰しもあるものなのかもしれません。しかし「ムードメーカーになる人たちに、不安な気持ちを払拭して欲しい! 暗くて細い産道を通って産まれてくる息子に、いっぱいエールを送って勇気づけて欲しい!」という一文を見るにつけ、女の自己実現に付き合わされる他人様の気苦労が偲ばれます。オシャレナチュラルも計画的に……ということで★8つ。
己のタレントとしてのプレッシャーや苦悩、そこでついに出会った自然派信仰、そしてつかんだ家族という幸せ……全ては「健やかエンジョイ中庸ライフ」というゴールに向かってまっしぐら。最後の方にちょろちょろっと料理だのお気に入りグッズだのが紹介されていますが、「実用的」というには程遠く、よって実用度は★4つ。
「えっ!? 胎話師からのメッセージめっちゃ実用性あるじゃん!」という方、健やかエンジョイ道の素質アリ! この本はどんなにつらいことも、「きっとこの子を産むために必要な試練として、神様が私に与えてくださったんだわ~」と脳内変換できる、最強の母性システムを手に入れた者のみが手を伸ばすことを許される書でした。
(西澤千央)