“自然体”なアラサー女子向け雑誌「BAILA」、その仮面の下に隠された必死すぎな素顔
■オバちゃんがバイラーズに与えた答え
今月号の読み物ページは「働き盛りを襲う『これって何のため?』」です。仕事に勤しんできたはずのバイラーズにも“専業主婦願望”の波が……と思いましたが、どうやら趣旨としては、働き盛りのバイラーズ世代が「こんなに忙しくて、一体何のために働いているの?」と思ってしまった時の鬱化防止企画のようです。特にバイラーズの場合、独身・既婚問わず「まぁ、仕事が好きだから働いてるって感じ……かな?」という表面上の自然体を演じながら、仮面の裏側では「生活のために働かなければ」というプレッシャーを抱えている人も少なくないはず。葛藤が多い分、「働く意義を見失いがち」なのかもしれません。
このような二面性を秘めたバイラーズが、具体的にどんな悩みを抱えているかというと、「新婚ですが夫に夕食を作れる日がほとんどない。彼は『いいよ』って言ってくれるし仕事も好きだけど、もっと『いい奥さん』になりたいというジレンマが」(29歳・IT関連)「友達からのお誘いメールに『忙しいと思うけど…』が枕詞のように入っている。はたから見ると充実しているように見えるらしいけど…たまには弱音を吐きたい」(34歳・マスコミ)など、ワークライフバランスの面で苦しんでいることがうかがえます。
そんな悩み多きバイラーズに向けて、同企画では30代、40代、50代女性がそれぞれ「私の働く意義」を提言しているのですが、世代別にその意見が異なっているのが注目すべきポイント。30代では「バリバリ働いて物欲を満たしています」という趣味やプライベート充実に重きを置いているほか、「忙しくても仕事があるから自分らしくいられます」という若干社蓄っぽい考えの人も。40代では「子どもの進路」「子どもの養育費」など、子ども重視の回答が多くを占めるほか、「家庭以外の居場所があることがうれしい」という声も。つまり40代では、働く意義の主軸が完全に家庭、となっているわけです。
そんな中、一見さらに“家庭”傾向が強まるように思えた50代に興味深いコメントを発見。それは「自分が残せるものは何かと考えながら仕事をしています」といった社会貢献や後輩の育成のために働いているという声や、「いきいきと体を動かせてお金もいただけるなんてありがたいです」といった、悟りにも似たポジティブなお言葉の数々。もはや、独身者・既婚者という枠を超えた、ヒューマニズム的解釈です。
「BAILA」は独身・既婚どちらの層もターゲットにしていると書きましたが、「BAILA」自身がバイラーズの私生活に踏み込まないような企画を作ることで雑誌が成り立っている部分もあると思います。しかし、働く意義を考えるとき、現在のバイラーズの立場がかなり影響してくるのではないでしょうか。一言で独身といっても、今後結婚する人しない人どちらもいるでしょうし、既婚者でも、今後子どもを持つか持たないかで、働く意義は大きく違ってきます。そんな不確定な将来のこともあり、働き方に悩むお年頃であるアラサー女子にとって、この「自分が残せるものは何かと考えながら仕事をしています」という声は、どこか雑念を洗い流してくれるような清涼感すら漂っています。「BAILA」的にも、独身・既婚間の嫉妬合戦を生まない落としどころだし、あら、なんだかとっても「自然体」風? この「人生悟ったオバちゃんに学ぶ」というのが、さまざまな背景を持つバイラーズの最も正しい扱い方なのかもしれません。次号も、葛藤多きバイラーズを見守っていきたいと思います。
(ルイーズ真梨子)