仁科友里の「女のためのテレビ深読み隔週報」

「金目当てやない」やしきたかじん、年下妻への絶対的信頼に見る“自分好き”男の生態

2014/11/15 15:00
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『たかじんnoばぁ~DVD‐BOX THEガォー!LEGEND II』/東宝

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな芸能人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今回の芸能人>
「さくらさんは、たかじんさんを天国に連れて行くために遣わされた天使だと思うんです」百田尚樹
『中居正広の金曜日のスマたちへ』(TBS系、11月7日放送)

 「男と女、どっちが『自分好き』か?」と、時々考えることがある。それは性差というより個人差だろうが、11月7日放送の『中居正広の金曜日のスマたちへ』(TBS系)を見て、男の「自分好き」には、女とは違う傾向があるなと思った。

 同放送回では、今年初頭に亡くなった、関西きっての大物芸能人・やしきたかじんが取り上げられていた。ベストセラー作家・百田尚樹が、たかじんの闘病の様子を、本人のメモとさくら夫人のコメントをもとに綴った『殉愛』(幻冬舎)を出版したが、そこからエピソードを抜粋し、VTRにまとめていた。

 30歳以上年下で、入籍してすぐにたかじんが亡くなり、莫大な遺産を相続する権利を有することになった夫人。一部週刊誌で「財産目当ての悪女」といった論調で書き立てられたが、それらが事実無根であると、百田は憤る。実際は、冒頭の発言のように「天使」のような存在であると述べていた。


 たかじんと夫人の出会いは、Facebook。イタリアでネイルサロンを経営していた夫人は、家族の用事で大阪の実家に帰省し、その時のクリスマス合コンでたかじんと知り合ったという。夫人は、かつてたかじんが愛した女性にそっくりで、たちまち魅かれていくが、夫人はそうでもなかったらしい。というのも、夫人は「やしきたかじんを知らなかった」というのだ。

 男性有名人というものは、「自分よりちょっと格下」という女性と結婚することが多いが、時々、「ほとんど一般人」と結婚することもある。その際、男性有名人の言う決まり文句が、「相手が自分を有名人だと知らなかった」である。

 具体例を上げよう。最近、離婚したばかりだが、モデルの清原亜希も、元夫の清原和博を紹介された時に、「誰だか知らなかった」とテレビで語ったことがある。それを聞いた清原は、満足そうに笑っていた。自己顕示欲が強いからこそ、「珍種」に魅かれるのだろう。ロンドンブーツ1号2号の田村淳の夫人も同じパターンである。淳夫人は、テレビを見なかったため、淳のことを知らず、故に先入観なく付き合うことができたそうだ。

 有名人とは、誰もが名前を知っているからこそ、有名人と呼ばれるわけだ。特に野球に興味がなくても、ニュースやスポーツ新聞の見出しで「清原和博」の名前を見たことはあるだろうし、淳夫人も一時は芸能界で働いていたわけだから、売れっ子である淳の名前を知らないわけがない、と思ってしまう。

 たかじんの周囲も、夫人がたかじんを知らなかった説を100%信じているわけではなかったようだ。同番組内で、たかじんの友人が「そんなことありうるのかなと思った」と、夫人を紹介された際、懐疑的な気持ちだったとコメントを寄せていた。


 もちろん、清原亜希、ロンブー淳夫人、たかじん夫人が、本当にそれぞれの夫を知らなかったかどうか、確かめることはできない。が、確かなことは、この「知らなかった」作戦が非常に有効である、ということである。なぜだろうか。その答えは、献身的な看護のあまり、手の皮はむけ、左耳の聴力を失った夫人について書かれた、たかじんのメモの一部にあるように思えてならない。

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