嫁姑関係は“夫と姑”の問題。いい嫁願望を捨て、心地よい距離を探るのが賢明
自身の経験や価値観を基盤に物事を見るため、異質なものを受け入れられない――。人間関係のつまずきの原因には、このような人間の悪しき習性があるだろう。特に女性の場合、結婚している/していない、子どもがいる/いない、働いている/いないというように、ライフスタイルの変化が人生観に大きな影響を与え、異なる人生を歩んでいる人との些末な行き違いから関係が悪化することは少なくない。
「すぐに群れたがる。『群れ』の中では均質を求め、異質なものを排除しようとする」「自分は自分、他人は他人という見方をすることが苦手」といった人間のネガティブな一面を「女」と定義し、自分や相手の中にある「女」との付き合い方を解説したのが、精神科医・水島広子氏の『整理整頓 女子の人間関係』(サンクチュアリ出版)である。「比べたがる『女』」「『敵』『味方』を作りたがる女」への対処法といった実用的な例がある中で、「女」むき出しになることの多い嫁姑問題を「女の問題」ではないと断言。一体どういうことなのか、水島氏に聞いた。
――『女子の人間関係』で、嫁姑問題は女の問題ではなく、夫と母親の関係だと指摘されていますね。
水島広子(以下、水島) 親離れ・子離れに要因があると思います。妻に対して「お袋とうまくやっておいてくれよ」というような、男性の優柔不断さが問題としてすごく大きい。ただ姑を「選ばれる性」(※編注)の女性として考えたときに、その立場もわかるんです。結婚するまでは姑は男性にとって一番の女性だったのが、違う人に取られてしまったと考えると、意地悪な気持ちにもなるでしょうし。嫁としては夫に自分を一番に考えてほしいのに、「なんで姑を優先するの?」と思うでしょうし。
とはいえ、やっぱり親離れ・子離れの問題です。この間、うちの兄嫁と互いの息子について話しているときに、「息子にこれだけ愛してもらったんだから、あとはお嫁さんにあげてかまわない。一人前の男として家庭を作れるように」という話になったんです。子離れに不安な人が、嫁姑問題を起こす可能性が高いのかもしれません。
――姑世代の中には、自分も嫁姑問題に苦労したからこそ、嫁を教育したいと思う人もいるのかもしれません。
水島 それは「ゆるし」の問題もあります。自分が苦労した時代のことをゆるせていれば、新しい姑像になれるだろうし、その頃の恨みを引きずっていればダメ。癒やしが必要な領域ですね。
――自分の生きた時代をあきらめるというのも、すごく大事な作業ですね。
水島 自分中心に考えた方がいいんですよね。「若い頃は確かに苦労もしたけど、昔と比べれば今は自分の年になってもオシャレして出歩けるようになったわ」と自分の世代を中心に考えて、時代に伴うこととして見ていくことができれば、多少嫁が気が利かなくても気にならないんじゃないですかね。
■「いい嫁願望」が嫁姑の関係を不安定にする
――夫は自分と母親との関係が嫁姑問題の原因だと気づかない、と歯がゆく思っている女性も多いのではないでしょうか。
水島 そうですね。だからできるだけおだてて、男性を通して姑に言ってもらう。「やっぱり、お母さんはあなたのことが好きだから、あなたから言った方がいいのよ~」とうまくおだてるしかないですね。男性はおだてれば、だいたい動いてくれますよ。
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※「選ばれる性」としての女性
水島氏は本書の中で、女性の中の「女」度が高くなっていく要因の1つとして、女性が「男性から選ばれる性」であることを指摘している。「どの男性に選ばれるか」によって女性の社会的な地位が決まるという風潮は、結婚だけでなく、あらゆる面で今なお残っている。