コラム
介護をめぐる家族・人間模様【第41話】

「夫が亡くなったから、今の幸せがある」母と妹を呼び寄せたシングルマザー

2014/10/13 16:00
Photo by MIKI Yoshihito from Flickr

 嗅覚が衰えている高齢者は死亡率が高くなるというアメリカの研究結果が出た。嗅覚を喪失した人は正常な人と比べて5年以内の死亡率が3倍だという。かなり戦慄のデータだと思う。嗅覚の鈍化そのものが死因ではないが、危険のシグナルとして体調管理の指標になるのではないだろうか。炭鉱のカナリアのように。そういう私は、30年以上に及ぶ花粉症のせいか、嗅覚が激しく衰えている(気がする)。そろそろタイムリミットが近いのか?

<登場人物プロフィール>
黒沢 加奈子(44)夫と死別したワーキングマザー。東京のマンションで暮らす
黒沢 日菜子(11)加奈子さんの娘で小学6年生
和田 富美子(77)加奈子さんの実母
和田 多恵子(38)加奈子さんの妹。

■北海道から母を呼び寄せることに

 黒沢さんはシングルマザーだ。夫とは離婚したのではない。死別だ。現在小学6年生の娘が保育園に通っていた頃、心筋梗塞で急死したという。

「夫とは職場結婚でした。私の仕事は不規則で、夜遅くなることも多いんです。夫もそうでしたが、家事や子育ては協力的、というより私よりもよくやってくれていたくらい。娘にとっても、私にとっても、本当に最高の存在でした。でもまだ娘も幼かったので、悲しんでばかりはいれませんでした。しばらくは、定時に帰れる部署に異動させてもらって、なんとか子育てと仕事をこなしていました」

黒沢さんは北海道の出身。夫が亡くなった頃、実家では両親と独身の妹、多恵子さんが3人で暮らしていたが、その2年ほど後、父親が亡くなった。

「母も持病を抱えていたし、足腰も弱っていました。妹は仕事で帰宅が遅く、母が1人で家にいるのが不安だと言うようになったんです。姉が結婚して隣の市に住んでいたので、しばらくはそちらに行ったりもしていたんですが、居心地が悪かったようで、また実家に戻っていました。私も、そうそう母の様子を見には帰れません。それで思い切って、母をうちのマンションに呼ぶことにしたんです」

 北海道から東京に。娘と孫がいるとはいえ、母富美子さんはよく決断したものだ。いくら娘がいても、住み慣れた場所から年を取って移るのは、かなりの勇気が必要だ。

「そうかもしれませんね。でも私は、結構楽観的に考えていました。母が来てくれたら、私の帰りが遅くなっても娘がさびしい思いをしなくてすむだろうし、孫と関わっていれば母の気分も晴れるだろう。それに母に少しでも家事をやってもらえれば楽だと期待していました

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