“ショーパン”こと生野陽子アナに見る、社内結婚が働きたい女にお得に働くワケ
人間は、自分のいる環境を「普通」と思う傾向がある。生野の結婚相手、中村も華麗な経歴と強運の持ち主だが、フジテレビの社員にとっては「普通の男」である。独身女性にとって、同僚女性が誰と結婚するかは大きな関心事だが、「普通の男」との結婚は、普通であるがゆえに嫉妬されにくく、好意的に受け止められる。
男にもウケがいい。前述した通り、男はたとえ付き合っていなくても、自分より稼ぐ男に女を持っていかれるのは許せんという潜在的嫉妬心を持っているが、社内の男性と結婚するということは、「会社の人間」を愛したということである。会社員であれば、人事権を持つ上司にある程度好かれる必要があるが、上司もまた「会社の人間」であるから、社内結婚は広い意味で言えば、上司や会社へのアイラブユー。なので、上司ウケがよく、いろいろと便宜を図ってもらいやすくなるのだ。
社内結婚は、生野の現状と時流にも合っている。生野は「女性セブン」(小学館)の「嫌いな女子アナランキング」で10位入りした。生野のように「パン」がつく女子アナはビジュアルに優れ、男性ファンの人気を獲得しやすい半面、年齢が上がった時に男性ファンが激減し、女性からは厳しい目を注がれるというマイナス面も抱えている。生野はこの典型例とも言っていい。食レポでも、お客さんのように食べているだけだったり、リアクションも同じ言葉を2回繰り返すだけと、バラエティ向きといえない。
かといって、ニュース読みがうまいわけでもなく、語彙も少ないので、報道向きとも言えない。冒頭の「いえ、知りません」発言は、結婚後、『スーパーニュース』に異動した生野が、ジャーナリストの津田大介氏に「香港デモで学生たちが使っているfire Chatを知っているか?」と聞かれた際の答えである。おそらく台本があるのだろうが、制作側も生野が博学とは思っていないだろう。
しかし、これはマイナスではない。独身女子アナであれば、バラエティもニュースもダメという個性のなさは致命的だが、世間は既婚女子アナに強い個性を求めないからだ。今後、生野は壊滅的にヘタな原稿の読み方さえ直せれば、「結婚して落ちついた」と好意的な解釈をしてもらえる可能性がある。さらに生野は、模範的ママアナに一番近いところにいる。ママアナは何人かいるが、生野夫妻の強みは、夫婦してアナウンサーのために、両方が「しゃべる」という特権を持つことである。仕事をして、夫婦で家事を助け合って、子どもも育てています――生野と中村が交互にそれを番組でしゃべり、アピールできれば、本人のみならず、局のイメージアップにも効果的だ。安倍晋三首相が掲げる「女性が輝ける社会」の実現者として、管理職への昇進もしやすくなることだろう。
女性が仕事を辞める原因の1位は、夫の転勤だそうだ。しかし、こんなケースもある。私が会社員の頃、社内結婚のカップルは、妻も夫の転勤先で仕事を続けられた(一般職正社員のまま転勤)が、医者や銀行マンなど高収入の夫を持つ女性は、問答無用で辞めさせられていた。これが偶然とは、私には思えない。これこそが会社版「男の嫉妬」の現れなのではないだろうか。働く女性の真の「敵」は女ではなく、「男の嫉妬」なのである。
今の会社が気に入っている人もそうでない人も、会社にいい人いないと断定する前に、もう一度、周囲の男性を見回してみることをお勧めする。
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。
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