なぜ「DRESS」は叩かれてしまうのか? アラフォーがオシャレをする意味を考える
けれども年を経るにつれて、結婚、仕事、育児、家族と、周りに対する責任が増してくると、そんなわけにはいきません。ましてや介護のような問題が降りかかったら、おしゃれどころではないでしょう。
もちろん、若かろうが年を取っていようが、おしゃれにかまけられる環境にあるかどうかは運次第なのですが、アラフォーにもなると、おしゃれをすることの目的が人によってかなり変わってきます。未婚なら、若々しく見せて伴侶を捕まえることが目的かもしれませんし、気持ちにハリをつけるために年相応なスタイルを探して、身ぎれいにしている人もいるでしょう。一方で、生活に追われて自分にかまける余裕がない人なら、ふと「DRESSな女、100の定義」を読んで、(DRESSな女になりたいかどうかは別として)爪をキレイにしないととか、ひじが硬くなってるな、なんて気がついてケアをするようになるのかもしれません。「DRESS」自体が目指すアラフォーのおしゃれは、どちらかといえば前者のような気がします。「DRESS」は読者に子持ちを想定していないようですし、自己啓発だおしゃれだと、自分のことに熱中できるアラフォーは、かなり稀少で、運がいい部類なのではないでしょうか。
そもそも「DRESS」は、「AERA」を読むような高収入バリキャリウーマンをターゲットにしているのですが、そういう女たちは、今さらファッション情報など必要ではなく、また読む時間もありません。想定される事実上の読者としては、恐らく20代からファッション誌を読み継いできた人たちでしょう。20年近く、仕事にも家族の世話にも、そして金策にも追われることなく、おしゃれにかまけていられる環境は、やはり運がいいとしか言えません。そういう苦労をしてきていないアラフォーの姿が誌面から垣間見えるから、そこまで運のよくない非読者に「頭が悪そうなファッション誌」と批判されてしまうのかもしれません。
■貴様、自分を棚に上げて「シブイ大人」とか言うつもりか!
「もしもあなたの『人に言えない恋』の相手が、シブイ年上だったら……」というタイトルを見た瞬間に、「貴様いつまで女子でいるつもりだ」と言いたくなってしまいました。中身は、吉田鋼太郎、遠藤憲一、松重豊への恋愛がらみインタビューなんですが……。いやー、10代の頃なら、10歳も年上と付き合っていたら、「すごぉい、年上と付き合うなんて!」と騒がれたかもしれないし、20代の時に40代と付き合っていたら「シブイ人と付き合ってるのね、結婚はどうするの?」と聞かれたかもしれませんが、アラフォーが50代と付き合ったとして、果たして「シブイ大人と付き合ってるのね」と思われるんでしょうか。自分もけっこうシブイ年齢ですよ。
アラフォーが「結構年上だなあ」と思う相手って、60歳くらいでしょうか。大人というよりは初老ですね。いい加減、年上と付き合いたいとか年下がいいとか、恋に恋するような感覚は消え失せて長いですが、「DRESS」な女たちの若々しい恋愛感覚ぶりに刺激されました。思わず、「シブイシブイシブイシブイシブイぜ」と連呼するシブがき隊のアルバム曲を思い出してしまいました。
この企画、「人に言えない恋」と言っているので、不倫前提のようですが、アラフォー女性にとっての年上=60以上となると、相手そのものの介護が近いわけですよね。が、不倫だったらそんな心配はないわけですから、いいかもしれませんが。恋愛企画なのにそんなことがよぎってしまうほど、介護で頭がいっぱいになった今月号でした。
(増井涼子)