イケメンドラマ特捜部【ジャニーズ&イケメン俳優】

トレンディードラマ『同窓生』で異彩を放った、井浦新の“しょぼくれた哀愁”の自然さ

2014/10/02 21:00

 三島の後に井浦新名義で演じたのが大河ドラマ『平清盛』(NHK)の崇徳上皇、これは歴史モノで、まぁ納得できる。しかし、『リッチマン、プアウーマン』(フジテレビ系)の朝比奈恒介を演じて以降、しょぼくれ感が際立っていく。ITベンチャー企業に務める朝比奈は、小栗旬が演じる天才ワンマン社長・日向徹をサポートするナンバー2だったが、日向に対する嫉妬と歪んだ愛憎から、やがて会社を乗っ取り日向を失脚させてしまう。しかし、日向がいなくなった途端、会社を切り盛りできない凡庸な自分に気づき、やがて日向を失墜させるために行った犯罪が明るみとなり逮捕される。出所にした朝比奈が安いジャケットを着て会社に戻ってくる場面は、かなりしょぼくれた哀愁があって、おしゃれな映画に出ていた時とは違う新しいファン層を、がっちり掴んだ。

 しかし、この『同窓生』となると、一気に役者としての値段を下げた感じがして、「ちょっと早すぎないか」と、驚かされた。まるで、ブックオフで昔欲しかった高額のサブカルアート系写真集を100円コーナーで見つけた時のような複雑な気持ちだ。実際、本作の健太は今まで井浦が演じたどの役よりも平凡でウジウジしていて情けない。年を重ねても微妙に少年性が残っている井浦の表情は座りが悪く、くすぶってる中年役に見事にハマっていた。

 だが、このしょぼくれ感は、本当はこの作品に混ぜてはいけないものだったのかもしれない。井浦の悲哀のある演技が伝染したのか、ドラマ自体も「いい大人がなにトレンディごっこしてるんだよ!」と、醒めてしまう瞬間が多かった。そんな哀愁込みで古典芸能を愛でるように「よっ! トレンディ!」と、発泡酒でも飲みながら半笑いで楽しむ分には、最後まで見応えのあるドラマだったと思う。
(成馬零一)

最終更新:2014/10/02 21:00
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